ホテルベーカリー創始者イワン・サゴヤンと福田元吉
福田元吉さんは「ホテルパンの父」といわれ、帝国ホテルに日本初のベーカリー部をつくったイワン・サゴヤン氏の愛弟子として食事パンの確立に貢献した人です。 イワン・サゴヤン氏はロマノフ王朝の宮廷職人の末裔で、そのパンに魅了された当時の帝国ホテル会長、大倉喜八郎氏の依頼により来日したのです。 それがこの店とどう関係するかといえば、ムッシュイワンという店名はイワン・サゴヤン氏のイワン。店でパンを焼いているのは、福田元吉さんのもとで修業した小倉孝樹さんなのでした。 ホテルパンのスピリット「気負いはないけれど、なんとか親爺(福田元吉氏)がやってきたことを守っていきたいと思っています。そこで修業した者でなければ受け継ぐことのできない無形の文化財を継承していきたい。伝統芸能といってもいいかもしれませんね」という小倉さん。ホテルのベーカリーは料理とともに食べるパンを確立した場所ですが、そもそも「ホテルパン」とは、どんなパンでしょうか。
「サゴヤンのパンは単に美味しいだけでなく、料理と一緒に味わうことによって、料理とパン双方の味がより一層際立つかのような風味であった」とは、帝国ホテル料理長であった村上信夫氏が著書『村上信夫メニュー』の中で書かれていたこと。 小倉さんは、パンを発酵で育てることについて、ストイックなまでに温度や湿度、吸水した生地の見きわめにこだわり、生地に触り、確認し、待ち、つくりあげていくことについて、話してくれました。本物の職人のからだはまるで、パンをつくる精密機械のよう!それこそが修業によって受け継がれる伝統の技なのかもしれません。 次のページではベーカリーカフェムッシュイワンについてご紹介します。 |