前回の記事 「柴田知実さんの生き方」
パンの職場における男性と女性の違い
パンの職場における女性と男性の違いについての話になり、松原さんの意見をお聞きしました。「女性は、はっきり想いが表に出るのがいいですね。男性は意思表示がうまくない人が多い。
女性は丁寧で細かいけれど、遅い。パンは見た目が大事だけれど、遅いと生産性があがらないですよね」
参加者の中にはうなずく人も多かったようです。
松原さんのスペシャリテ、リュスティック・ノワは二等粉入り。二等粉とは小麦の表皮に近い部分。酵素が働いて生地だれしやすいが、味を重視している。化粧粉も香りづけにたっぷり。 |
イメージをかたちにする
柴田さんはパンをつくる時、イメージが先にあって、逆算して配合を考えていくやり方をするそうですが、松原さんもその辺りが同じなのだそうです。松原さんは言います。 「最初はもとあるレシピの配合の中でいじっていくことからやっていました。 その後、いろいろなコンテストのチャレンジをする中で、自分ならこの食材でどうつくっていくか考えるようになったんですね。そうやってつくれるようになると、自信が湧いてきて、それに拍車がかかっておもしろくなってくると、いろんな ことができてくる。レシピはもう出尽くしているんです。だからそれをいかにつくっていくかの楽しみがありますよね。餡クロワッサンなんて、そうだったなぁ」
イメージをかたちにする二人のシェフ。わたしは二人に今ベーカリーシーンに欠かせない共通の要素を見たように思います。それはパンだけではなくて、料理や菓子にも視野を広げて いるところです。
柴田さんは言います。「パンを志すからといってパンばかりでなく料理もデザートも興味を持ってほしいです。それから友達。わたしは異業種の友達も多いのですが、たとえば画家や小説家と話をする中で発想の助けになることも多いんです。ぜひいろいろな友達をもって視野を広げてください」
柴田さんが話す合間、要所要所で説明をいれながら、松原さんはバゲット、セーグルゴルゴンゾーラ、リュスティックノワ、マカロン、ラタトゥイユなどを次々につくっていきます。
パン生地を見る参加者に、松原さんはこんな風にアドバイスします。 「手のひらでさわって、席に帰って数分後、思い返して下さい。 そのやわらかさを。それで記憶できます」
松原さんのパンと料理とお菓子
松原裕吉さんはパン職人歴18年。さまざまなコンテストの受賞歴があり、2004年にはカリフォルニアレーズンカルネリーコンテストで世界一に輝いています。 日本のみならず韓国、フィリピン、マレーシア、シンガポール、タイなどアジア各国で講師 を務められています。日本の製パンをお手本にする海外諸国は多いのだとか。 この夏は早くから日本のパンのレベルに注目していたマレーシアのランカウイに技術者として招かれ、ベーカリーの立ち上げに尽力。 シンガポール、マレーシア、インドネシア展開のビジネスの可能性を語りました。今回実演されたパンは、パティスリーマディ時代からの大人気商品、リュスティックノワ、バゲット、セーグルゴルゴンゾーラ(ゴルゴンゾーラチーズ入りのライ麦30%のパンを2種類の形に成形)でした。お菓子はマカロン、料理はラタトゥイユ。
左のカラフルなのがマカロン(デモンストレーションはショコラのみ)。真ん中がセーグルゴルゴンゾーラ2種、奥がバゲット、右がリュスティックノワ。 |
ラタトゥイユに2種類の生ハム。松原さんのラタトゥイユは紫小玉ねぎ入り。パンが余ったら、くり抜いてラタトゥイユを詰めてチーズを載せて焼くなどしてロスを減らす。サンドイッチにも使用することができる。 |
次のページはそんな今回コーディネートされたチーズとワインそしてまとめです。