村山糧うどん



武蔵村山市や東村山市、小平市などに伝わるうどんは一口に武蔵野うどんと呼んでいるが本来は丘陵地域で稲作に適さない土地のため小麦が栽培されていたのがそもそもの始まりのようだ。近年さすがに小麦農家は減ってしまったがまだまだ農業は身近に見ることができる。
この農家の日常食がうどんであった。
忙しい日常で手間をあまりかけずに食べるための知恵が詰まっている。
日常食として存在する糧(かて)うどんに迫ってみる。

今回武蔵村山市に発足した村山うどんの会めんくいうどん教室に参加して村山糧うどんの作り方を3週にわたり体験した。

農家の日常食としてのうどん


東京西部エリアの丘陵地帯は水利の影響で稲作が適していないため麦の栽培が盛んであったという歴史がある。
小麦は収穫すると製粉屋に持ち込んで小麦粉にして売ったり、乾麺に取り替えてもらったりとか日常の米の代わりとして主食の位置にあったようだ。忙しい農作業が終わってからの食事の支度は慌しいものであったに違いない。

小麦粉と塩と水を混ぜ合わせて作るうどんに畑で採れた季節の野菜を付け合せる食事が主食であったのだろう。
日常的にうどん食べられたことは容易に想像することができる。手間をかけない調理法が確立されてそれが伝承されたと言えるだろう。

手間をかけないうどんの作り方


全国各地にいろいろなうどんが有る。それそれの作り方にはその地方特有の方法がある。ある幅でその特長を備えることで讃岐うどんと言ったり、水沢うどんと言ったり、稲庭うどんと言ったりする。
しかしそのエリアのうどんの作り方がすべてその方法かと言うとそれも異なる。極論すれば各店で異なったり、各家庭で異なることもある。

その意味では武蔵野うどんと呼ばれる東京西部から埼玉県に広がるエリアのうどんの作り方も一つの型にはまらないおおらかさを持っているといえる。昔の家庭ならどの家にもあるような簡単な道具で作ることが可能なことも一つの特徴といえるだろう。

村山糧うどんの作り方にその特徴をみてみよう。
資料提供 村山うどんの会 めんくいうどん教室
うどんの材料(準備するもの)
 
■うどん粉 1kg
■塩  0から50g
■水 400ccから500CC


小麦粉と塩水を合わせる

定義で言えば堅苦しいがうどん粉を用意するというのがまずは肝要。
いわゆる中力粉をさすがここでは地元産の農林61号の小麦粉を指すと考える。

塩の量に注目。0gから50gという数値は・・・作り方の幅の広さをあらわす。
塩を入れないという選択肢もあるのだ。

極端な例では塩水にしないで小麦に塩を振りかけて水入れてこねていくという手法も有る。

今回のうどん教室では500グラムの小麦粉に対して5グラムの塩を用いた。
水の量は塩を含めて210グラムを使用した。
その日の天気や小麦粉の状態で数値が変るのは言うまでも無いがそれでも塩は低めである。
もちろん1キロに対して50グラムを加える作り方もあるのでこうでなければいけないという絶対的なものではない。しかし塩の量が増えるとは茹で時間が長くなるという。早く食べるためには塩は低めなのかもしれない。


今回の場合を数値化すれば
小麦粉500g
塩5g
水205g

であるが・・・計量カップで210ccを作ったのが実際である。もちろん粉の状態を見ながら加水するのは当然なので塩水は一度には加水しない。数回に分けて様子を見ながら行う。おおらかなのは塩水でも真水でも極端に細かなところは気にせずにその具合を重視することだ。塩分量が多ければ水と塩水の比重の差も大きくなるので水分量としてうどんの出来に影響を与えないこともないが、ここでは塩が少ないので大きな差にはなりにくい。

■踏み

一塊にした生地を袋に入れて踏む

水とあわせた小麦粉は一塊にしてからビニール袋に入れて踏む。ビニール袋は10キロの米袋が推奨。ここでも特別なビニールシートを用意しない日常性がみてとれる。もちろんビニールシートでも良いと思う。




踏んで艶が出るまでなじませる

伸びたら丸めて数回踏む。(3から4回)裏返しても踏むのが私には珍しく感じられた。讃岐うどんのようにトコトン鍛えるという感じよりも艶が出たら終了と思ってよい。



踏んでから仕上げた団子を寝かす

玉にして30分程度寝かす。
寝かし時間もいろいろな考え方がありそうだが、早く食べるというテーマの村山うどんだから30分はぎりぎりの選択かもしれない。長く寝かす場合は加水と塩の量を再検討する必要がでるだろう。特に新鮮な製粉したての地粉の場合粉に含まれる水分が多いような気がする。その日が雨だと加水量も慎重に決めたい。


■のしと切り

寝かした生地を大きく伸ばす

麺棒を使ってのして行く。教室では円形に仕上げたり、四角に仕上げたりとこのあたりは個人の好みかも。

この時点でもうお湯が沸いているという環境を整えておく。



500gだと50センチ四方くらいに

打ち粉をして10センチ幅の屏風だたみにして包丁で切る。
厚さは3ミリから4ミリ。茹で時間を早めるために平打ちに近い麺線に仕上げることもあるようだ。




屏風ただみで菜切り包丁の手駒切り

ちなみに打ち粉は友粉(うどん粉を少し残しておく)で小麦粉を使う。切ったらすぐに茹でて食べてしまうからである。道具も専用の包丁というよりも家庭にあるものを使うという特別なことをしないことも一つの特徴かもしれない。現代では菜切り包丁は特殊な包丁に属するかもしれないが。

打ち粉のことを補足すると切ったうどんを少しの時間でも保存する場合はコーンスターチや澱粉を打ち粉にしないと切った麺がくっついてさばけなくなるので注意がいる。



■茹でる。

打ち粉はすぐに食べるときは小麦粉

茹で時間はうどんの太さにもよるが今回の出来上がりでいうと平打ちに近くなった場合は8分程度。太目の4ミリ角の場合だと10分程度はかかる。



たっぷりのお湯で茹でるのが基本

茹で時間で食感が大きく異なるので好みの固さというか柔らかさに仕上げる。
茹で上がりは流水でよく洗ってぬめりを取る。一般的にはASWよりグルテンは低めなので少し優しく扱う。


■汁

できあがった糧うどん
温かいつけじるを用意する。鰹節ベースの濃い口醤油と砂糖で仕立てる。美味しく作るなら昆布と鰹節の出汁が良いだろう。
もちろん砂糖の代わりに味醂でもよいが、自分の味の思い出としては砂糖だろうか。
早くできて簡単に食べられることを条件にするとあまり凝った汁は作らないようだが、ここは美味しい汁を用意したい。


■糧
季節の野菜を茹でてうどんのおかずにする。5月の教室では講師の方の畑で取れたばかりのほうれん草・小松菜・ネギ・サヤエンドウなどが使われた。

村山糧うどんは古くから受け継がれてきた生活うどんだ。
素朴だが考えると実に贅沢なことかもしれない。
地元で取れた小麦と野菜と豊かな地下水。野菜の一大生産地である村山である。新鮮な野菜や穀物を地産地消を実践しているのだからこれ以上の幸せは無いかもしれない。

講師の方たちは地域で農業を営み小麦も生産されている方たちが中心になっている。
日常的に自分の家で打つうどんの作り方を教えていただけたようで大変参考になった。
なお3回の講習に出て「村山うどんめんくい伝承人」の認定証をいただいた。
私も伝承をこころがけよう。

なお村山うどんの会では学校や職場でのうどん教室の開催をサポートしている。村山うどん作りを伝承したいという方は問い合わせてみてはどうだろうか。
問合せ先 村山うどんの会公式サイト
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