小麦に罪はない


2004年11月9日の新聞やテレビで報道された香川県農協の半生うどんの不当表示問題。少しびっくりした。そのうどんは香川県農協が発売している「半生手延べ讃岐うどん大地」続報では冷麦やそうめんも発覚した。
「県産小麦100パーセント」を表示する讃岐うどんが実は8割がオーストラリア産小麦粉(ASWオーストラリア・スタンダード・ホワイト)を使っていたとのこと。

さぬきの夢2000


さぬきの夢2000は香川県が推奨している小麦で2000年に新品種として登録された小麦の品種。本格流通がやっと昨年から始まっていて讃岐うどん用小麦の注目のブランドとして育ちつつある。またNHKの人気番組プロジェクトXでも取り上げられたこともあり一度は食べてみたいという人も多く全国的知名度が上がってきている矢先の今回の事件だ。
香川県や生産農業関係者、製粉業者、製麺業者、消費者を巻き込んでの大騒ぎの様子を示している。

素朴な疑問
さぬきの夢100パーセントの半生うどんは作るのが難しいのではないだろうか。さぬきの夢2000のたんぱく質、グルテンの質は比較的柔らかいという。水加減に非常に敏感な粉で取り扱いが難しい。
作りにくいために8割のASWを混入したのであろうか?
今回問題になった手延べ半生うどんやそうめんは讃岐うどんなのかという疑問も個人的には持っている。
こう書くと何を言おうとしているのか良く分からないかもしれないが手延べという作り方はそうめんの作り方で一般的な讃岐うどんの作り方ではない。
香川で作るうどんはすべて讃岐うどんなのか。
参考までに製麺業者団体の指針を見てみよう。

讃岐うどんの定義として全国生めん類公正取引協議会の解説では以下のようになっている。
●香川県内で製造されたもの●手打、手打式(風)のもの●加水量40%以上●食塩=小麦粉重量に対し3%以上●熟成時間=2時間以上●茹でる場合=茹で時間約15分以上で、十分アルファー化されていること。
以上引用。
もっとも協会に属していないとこの規約も意味がないことになると思われるが・・・
この点に関して言えば手延べは手打ちではないといえなくもない。そしてそれは讃岐うどんではないともいえる。また新たな不当表示に発展か。それはまあ本質的な問題ではないと思えるので追求しない。

さぬきの夢2000発売前の「大地の実り」の品種を使用した『大地のみのり』の手延べうどんは食べたことがあるがなかなか美味しかったと記憶している。もっともメーカーが同じかどうかは正確には不明だが・・・

視点を変えて


不当表示は消費者を裏切る形なので非難されるのは仕方がない。特にさぬきの夢2000の味に興味を示して購入した消費者には謝罪すべきであろう。

うどんの食味を考えるとこの20パーセントさぬきの夢2000を加えたASWのうどんは美味しいと思える。ASWは色が白く腰も強くほとんどのうどん店が使用する優秀な小麦粉だ。これに風味の良い地粉の夢2000が加わる。食べてないからわからないがまずくないと思われる。新聞の論調は8割のASWが安くてまずい小麦粉、もしくは安全に不安のある小麦粉というニュアンスを読者に与えたいというイメージが読み取れる。あからさまに書いているわけではないが100パーセントが正義で混ぜ物は不正という図式を当てはめようという思える。
100パーセント使用と書いてあるのに20パーセントだったというのはまさに不正表示だから非は業者にあるが、今回の問題はその嘘の表示だけが問題なのだ。これが20パーセントさぬきの夢2000使用という表示ならまったく問題はなかったはずである。

年間500万トン(注1)あまりの小麦の輸入。そのうち約125万トンがオーストラリアの小麦だ。主に麺用粉として使われる。国内産小麦の生産は約87万トン。そのうち麺用途が約1/3程度である。
香川で消費される小麦粉は年間6万トンと言われているからさぬきの夢2000の生産量3000トン(注2)は香川で消費する小麦の5パーセントに過ぎない。今後作付け面積の拡大も期待できるが急激には伸びないだろう。さぬきの夢対ASWという図式でなくともに共存してより美味いうどんを作ることに目標を置いてほしいものである。


注1 数字は農林水産省発表資料(2004/10/12)
平成16年度外国産小麦類検査実績の産地(型)銘柄別検査項目別平均値
(平成16年4月~8月)からオーストラリア産スタンダードホワイトの数値

注2 数字は農林水産省発表資料(2004/10/15)
平成16年産麦の検査結果より普通小麦の発表値による。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※メニューや料金などのデータは、取材時または記事公開時点での内容です。