江戸蕎麦 ほそ川


両国に来ると江戸東京博物館を覗きたくなる。子供を連れて来ても楽しい場所だ。誘うと「学校で行ったことがある」と言う。そうだろう教材として選びやすい施設である。でも本当は大人になってから観た方が絶対に楽しいところなのだ。博物館や美術館などは子供より大人になってからが楽しいのだ。そして誤解を恐れずに言えばオジサン、オバサンになってからの方が楽しめる。自分が築いてきた経験と重ね合わせてはじめて意味というか価値がわかることもある。ある意味子供は邪魔なのである。(笑)



●江戸東京博物館の日本橋

常設展示の6階と5階をゆっくりと見学すると2時間から3時間はあっという間。平日ならば原寸大の日本橋を一人で渡れるかも。大名屋敷の模型に当時の大名の権威、権力に思いをはせたり、芝居小屋に江戸情緒と町民文化をみたりたくさんのジオラマに時を忘れる。
明治・大正・昭和と時代が進めば何となく記憶がある民具類や道具類、電気製品も見た事のあるものに変わってくる。心が無邪気になっている。

●江戸蕎麦 ほそ川
歩きつかれたら・・・子供連れでなければお薦めしたい蕎麦屋がある。掟破りだがうどんガイドの蕎麦屋レポートもたまにはよいだろう。(ちなみにこの店にはうどんは無い。)埼玉県吉川市で人気店であったほそ川が平成15年11月末に両国に移転してきた。江戸東京博物館東側の清澄通りを渡って一つ目の路地を右に入ったところだ。路地なので注意深く見ないと見過ごしてしまう。
石臼びき自家製粉生粉打ちは最近のそば屋のトレンド。玄ソバを好みの荒さでひいてその日使う分だけ製粉するという理想的な手法だ。旨いそば屋のひとつの目安になる。うどん店によるうどん粉の自家製粉はほとんど聞かないが流行というか話題はさぬきの夢2000など新種の国産小麦の登場だろうか。純国産小麦による地粉うどんのムーブメントは確かに有るのだがそば屋の自家製粉の問題とは何となく雰囲気が違うかもしれない。

ほそ川は吉川時代から築いてきた確かな製粉とそば打ち技術で店の魅力を増して開花させた思う。店の雰囲気や器も味のうちに入るのだろうが、ゆったりとした店内でいただく10割そばは香、喉越しとも絶品であった。



●大テーブルに映えるせいろ

せいろはこの日は茨城産のもの。ほのかな甘みと香があり滑らかなそばだ。流行の粗びきではないが正統派江戸そばといえる。汁も一口目は鰹節の香が勝っていたが二口目からはバランスよい。そばと良く調和する上品なうまさである。2枚目はいなかを注文。





●食感が楽しい田舎そば

田舎は甘皮部分までひかれたであろうと思われる色が黒く麺線も太くなる。つややかに黒光りというと言い過ぎだが2.5ミリほどの四角な、なまめかしさを感じさせるそばである。田舎そばというと乱切り、短め、ぼそぼそした食感か、ぬめりを感じさせるヌルヌルした歯ざわりのものがでて来ることも多いのだが、素人そば打ちならともかくそば屋ではきっちりとした美味しい田舎そばを体験したいものだ。ほそ川の田舎そばは立派だった。そばの素材のよさが前面に出ていて噛んでも、すすっても香が立つ。でも噛んだ時のインパクトが嬉しいかもしれない。ああ・・・そばを食っていると実感。
うどんを食べたときの時の幸せとはまた違った幸福感を感じさせる。うどんで言うとかみ締めて食べて旨さが判る武蔵野うどんや吉田うどんと田舎そばの楽しさが共通しているかもしれない。洗練されていない良さだろう。



●隠れ家的雰囲気の店の一角

表の路地を眺めながら時間がゆっくりと流れる。店内は静かだ。声高に話す人も無くたまたま居合わせた3組の客は皆カップル。低く会話が聴こえる程度。昼酒とつまみと思い思いのそばの組み合わせ。落ち着いた店内はBGMも無い。大人の隠れ家と言えるだろう。この店は子供お断りなのである。小学生以下の子供連れは入れない。賛否はあるだろうが一つくらいハードルがあるとその店のグレードがわかってよいだろう。何でも許されるご時世だから反対の声も上がりそうだが大人の世界を残しておくのもよいことだろう。そんなご主人の店だから大人の客は逆に安心して通えるだろう。

うどん店で子供お断りというのは聞いたことが無い。有ったら・・・私はなんと思うか。子供には食べさせたくないほど美味しければ許すかもしれない。秘密の味(笑)。
経験を重ねないと判らない味もあるし、経験を積ませるためには食べさせたいし・・・この辺が難しい。
一刀両断すれば子供をしつけられない親がいるからこんなことになるのだ。(笑)
国技館で本場所が開催中なら江戸博物館・ほそ川・相撲観戦と洒落込みたい。当日自由席なら2100円。本物が見られる。これも大人の世界です。双眼鏡が有れば興奮間違いなし。



【江戸蕎麦 ほそ川 DATA】
東京都墨田区亀沢1-6-5
電話03-3626-1125
営業時間 11:30-20:00
月曜定休
大江戸線両国駅A3出口より30秒北斎通り1本目路地右折すぐ
主なメニュー せいろ 900円 田舎そば 1000円 かけ900円

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