伊勢エビ
せっかくなんで伊勢に来たからには伊勢海老ということで、サラダ仕立ての料理に仕上げてもらう。シャペル風のサラダかな、と想像したが身の部分はボイルしてサラダに溶け込み、頭の部分はグリエして香ばしい風味を漂わせる。味噌の部分がたまらなく旨みを爆発させ、このひと皿だけでこの小さなビストロのもてなしの気持ちがわかりかけてくる。一皿で2つの楽しさを仕込む料理はこえれだけではなかった。ボイルとグリエの組合せ |
この日は昼もフレンチだったが、食べているうちに段々とお腹が空いてきて追加でポークパテを。パテやオニオングラタンスープでそのお料理人のウデがわかるとはジャック・ボリーさんの名言だが、ここのパテは一味違ったものだった。普通のパテと焼きあげたものが一緒に盛られ、その香ばしさに気持ちがときめくのなんのって。
肉厚で食べ応えも十分 |
地元、伊勢地鶏のコンフィはぱりっとした皮の中にジューシーな味わいが閉じ込められ、それはもう満腹を通り越しても胃袋に辿り着きそうな勢いだ。食が進むごとにお腹が空いてくる不思議な時間。すぐ近くに食を司る豊受大神が鎮座されるが、そのせいなのかどうか。
肉の旨味を引き出すちょうどいい塩加減 |
一人だけれど実に居心地のいい時間だ。
隣のテーブルではボルドーのグランヴァンを間に立ててご婦人達が世間話に大輪を咲かせ、向こうのテーブルでは若い女性達が賑やかに盛り上がる。
実は内宮近くの神宮会館から自転車で夜道を走って来たのだが、途中に一軒家のレストランがあった。カンパーニュという。美味しそうな香りがしたのでショップカードでももらおうと思い中に入ると、サービスの方がどうも怪訝そうな表情をしている。愛想なくショップカードだけ受け取り、自転車を走らせたのだが、その話をシェフに話したところ笑い出して、「きっと同業だと思われたんですよ。こんな田舎でショップカードだけもらいに来る人ほとんどいませんから」と。聞くとシェフはその店の出身だそうだ。
翌日早朝に神宮に足を運んだ。架け替えられたばかりの宇治橋、清らかさ溢れる五十鈴川の水、万物を包み込む杜の空気。古来より伝わる日本の美が鎮座する地で、ほのぼのとしたレストランに出会えたことには感謝の気持ち以外、見当たる言葉がない。
20年毎に架け替えられる宇治橋。ここから先が聖域となる。 |
「そうだよ、食べるということは自然への感謝だよな」と思いつつ、これからも素晴らしい料理にめぐり合えることを神々に祈ったお伊勢参りであった。
■ブータントラン(伊勢)
三重県伊勢市本町4-7 ペアコート伊勢1F
Tel:0596-29-3308
営業時間
ランチ 11:30~15:00(LastOrder-14:00)
ディナー 18:00~22:00(LastOrder-20:30)
定休日:水休
伊勢市駅より徒歩4分程度
地図
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