フレンチ/全国のフレンチ

ブータントラン(伊勢)(2ページ目)

「神宮」で有名な伊勢。そこはフランス料理の街だった。その中で発見した気軽なレストランの料理は素朴ながらまるで神憑ったものだった。

嶋 啓祐

執筆者:嶋 啓祐

フレンチガイド

ワインは自然派が中心

駅前の通りから一本細い路地を入った先にある明るいネオン、ブータントラン。19時半過ぎの店内は平日でありながらもかなり賑やかだった。真新しいオープンキッチンの前にカウンターがあり、そこへ。18席ほどの店内は若いシェフと可愛らしいマダムの二人で切り盛りしている。開店したのが2009年5月11日。まだ半年程度の新しい店ではないか。
ワインリスト
大勢で行ったら何本でも飲んでしまいそうだ

非常に混雑していたのでのんびりと待つ。カウンター越しにシェフの動きが手に取るように見える。仕込みの段取り、手際のよさ、置き場所、盛り付けの様子、そういった動きでだいたい料理人のウデがわかるものだが、ワインを待つ10分ほどの間でこの店の実力がほのかに見える。

ワインリストは大きなボードにワインの写真とコメントが並んでいる、おそらく私が見た中で始めてのもの。そしてワインは田舎にといっては失礼だが、大手のインポータのごくごく普通のワインばかりかと思いきや、都内の人気レストランにあるものが並び、価格も驚くほど安い。もう一度書くがビックリするくらい安い。ちなみにジョゼ・ミシェルのシャンパーニュが5800円ときた。

「最近はお酒を召上らない方も多くて、少しでもお値段を抑えて楽しんでもらえたらと思いまして」とマダムは控えめに話す。

聞くとシェフがソムリエの資格を持つという。料理に合わせてワインも高品質なものを手ごろな値段で楽しんでいただきたいということらしい。マダムはそういったシェフの考えを理解し、にこにことした笑顔で湯気が立ち上る料理を運ぶ。

トマトとジャガイモのスープは挽肉が仕込まれる。ミネストローネといえばそうなのだが、なんてことのない温かい野菜のスープに妙に心も身体も惹かれていく。ごくごく普通のスープなのにとんでもなく旨い。なんでかわからないが、とてつもなく旨い。日常的な野菜、そして安価な肉、ただ都会と違うとしたら水だろうか。すーっと身体に溶け込んでくる優しい水。そして野菜。翌日のランチにも同じものを食べに行ったくらい気に入ってしまった。
野菜のスープ
ひと言でいうと懐かしいホンモノの味わいか

ひとりだがワインはボトルで。南仏のシャルドネは味わいのはっきりとした自然派ワイン。値段も確か2000円台でびっくりだが、何でもかんでも東京と比べてしまう自分が何か悲しい。
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