フレンチ/フレンチ関連情報

小淵沢でワインを造る女性<前編>(4ページ目)

小淵沢のリゾナーレの近くで小さな畑を耕す女性がいる。エレガントで余韻の長いワインを目指す彼女の長い旅はまだ始ったばかりだ。

嶋 啓祐

執筆者:嶋 啓祐

フレンチガイド

草取りに始まり草取りに終わる

畑仕事はとても楽しいという。しかし、一緒に畑に出ると、やることのほとんどは草取りだ。除草剤を使っていないので、当たり前だが、雑草があっという間に増えてしまう。この季節は雑草も元気な季節だ。「草取りに始まり、草取りに終わるのよ」と笑いながら話すが決して自然派ワインといったものにこだわっているわけではないと話す。無農薬だとまだ小さな葡萄の樹が全滅してしまう可能性があるので、葡萄が病気にならないような必要最低限の農薬は使う。スタイルとしてはリュット・レゾネ(対処農法、減農薬栽培。 できる限り化学物質の使用を避け、必要な場合にのみ少量使用する栽培方法を言う)に取り組んでいる。
草取り
除草剤を使わずに自然の摂理の中で仕事をする池野氏
淡々と雑草を取り、葉に着いた害虫を取り除く池野氏。その姿には何か余裕のようなものが感じられるがそれはいったいどこから来ているのだろうか。2度お会いしただけではわからない醸造家の一つの姿がある。

自分で畑を耕し、葡萄を栽培し、ワインを作る。ひと言で書くとたったこれだけだが、どんなに有名人でもお金があっても広い畑を持っていても美味しいワインを造る絶対的な要素とはなりえない。一番大切なことは「継続できる情熱」であるということを、淡々と畑の雑草を取る池野氏の姿が物語る気がする。チャーミングで静かな物腰からはうかがい知れない凄まじいエネルギーを感じるのだった。
池野美映
これから秋に向けて収穫が始ろうとしている
初夏に再び訪問したときは、梅雨特有のどんよりとした天気だった。共に畑を巡り、小さく実をつけた葡萄を眺めていると、とんでもないことが起きていた!!病気や害虫ではない天敵が現れたのだ!!

<9月に続く>

リゾナーレについての小話

リゾナーレのコンセプトは『大人のためのファミリーリゾート』。中世ヨーロッパの山岳都市をイメージした建物は人々が地上のどこよりも安らげる空間になっており、ホスピタリティが素晴らしい。リピートしたくなるのもよくわかる気がする。地元の小規模な生産農家を大切にし、地元のワインにこだわり、肩肘張らない運営がとても好印象だ。宿泊した翌日朝には、無理を言って生産農家の一軒を訪ねてみた。

農薬を使わずに淡々と野菜作りに没頭するその農家はリゾナーレにその日の朝採れた野菜を運ぶが、注文どおりにいかないこともあるという。シェフはそれも当たり前と捉え、その日の野菜の種類や状態に応じてメニューを決めるという。

野菜料理
地元の素材が朝すぐに届けられる
メインダイニングのオットセッテは、シェフと「7人の達人」(生産者)との出会いから生まれた高原イタリアン。地元食材を使い、優しいが何を食べているかはっきりわかる料理を繰り出す。軽井沢はホテルブレストンコート ノーワンズレシピ同様、料理に合わせるグラスワインのセレクションも料理にぴったりとフィットする。

ファミリー向けのレストラン、ワイワイグリルも見逃せない。朝食はブッフェスタイルだが、焼きたてのホテルメイドパンのほか、高原野菜をメインに一品一品のクオリティに手抜きはない。リゾートならではの幸せなひと時が過ごせるがついつい食べ過ぎてしまうのには注意が必要だ。特に野菜たっぷりのミネストローネはぜひ大ぶりのカップでいただきたい。

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