フレンチ/全国のフレンチ

ラ・サンテ(札幌)(3ページ目)

北の大地、札幌。北海道の食材をふんだんに使った料理は単に素材だけではなく、間違いなく料理人の気持ちと技術のたまもの。わざわざ食べに行くべき料理の数々をご覧下さい。

嶋 啓祐

執筆者:嶋 啓祐

フレンチガイド

フランス料理
見よ、この桃色の恵みを

北海道産仔羊

足寄と言えば松山千春、そして石田めん羊牧場の羊。品種はサウスダウン種と言い、肉質はとても良いものの繁殖や生育が難しい希少なもの。生後60日の生まれたて仔羊のローストはその色合いがすべてを語る。それを食す私たちはその自然と生産者に感謝し跪くしかない。少なくとも脂が乗りすぎた極上といわれる牛肉、それも屠殺前にはふらふらになって立っていられないほどの不健康で「高価な」牛肉を食べて幸せと感じてきた私の考えを変えさせるには十分な体験だった。

石田めん羊牧場のサイトを見ると私は行ってみたくてたまらない衝動に駆られる。よし、次回はぜひ行ってみよう。

フランス料理
意外な郷土料理に楽しさ倍増
10歳のマトンのすね肉はタジンとして運ばれてきた。タジンはモロッコの郷土料理。スパイスの効いた香りとスープはこれまでのお腹の落ち着きをふっとばし、さあ、ディナーはこれからと威勢のいい太鼓が鳴り響く。

締め括りは10歳マトンの背肉のロースト。旨いのは脂、旨いのは肉。そのどちらも羊から滲み出たジュを纏い余計なものは一切なし。最後の最後に登場した羊はオーソドックスなものでありながら、今宵の料理の大千秋楽を迎えるにはこれ以上ない料理かも知れない。
フランス料理
脂が旨い〆の羊
美味しかったとか良かったとか単純な表現ではとても追いつくことができないラ・サンテの料理、そして時間。ワインは料理に静かに寄り添い、いつしか隠れて消えていく。優しいマダムは風のように、ほんとうに来て欲しいときにすーっと現れる。

もちろん、途中のグラニテ、そしてデザートもこれまた記憶に残るもの。今宵の料理はどんなシチュエーションであろうと一生語り合えるものかも知れない。

ラ・サンテは現在発売中のdancyuのP40で取り上げられている。シェフのユニークな一言が載っているのでぜひご一読いただきたい。

フランス料理
肩の力を抜いてくれる優しいデザート
北海道の生産物、特にアスパラをはじめ野菜は進化していることがはっきりと理解できる。道東などで独自のやり方で試行錯誤している有能な生産者達の「作品」はこれまでのジンギスカン以外の料理で新しいムーブメントを創り出すに違いない。これはまさしく食材のリノベーションではないだろうか。毎年6月に訪れる北海道。生まれたところでありながら、あの頃とは大きく異なる北海道にものすごく嬉しくなる。身震いするほどだ。

とは言え北海道の町の多くが繁華街のシャッターを下ろす過疎の過酷な現実。でもどこかで若い芽が出てそれが大きく育つはずだ。悲観するより少しでも明るいその先を信じて歩くしかない。私にできることはせめて北海道について書くことくらいか。

ブツブツと独り言を言ってしまったが、札幌のフレンチはまだまだ終わらない。翌日は東区にあるレストランでもシュミネ、ラ・サンテと同様、非常にクオリティの高い料理に感涙したのであった。

フランス料理
香りが沸き立つ瞬間だ
*まったく個人的なことなのですがこの場を共有できた渡辺さんご夫妻のご婚約を心よりお祝い申し上げます。そして今日からフランスに旅立つHidekichi氏の美食運を祈ります。

ラ・サンテ
札幌市中央区宮の森1条6丁目5-1 M1.6ビル2F
地下鉄西28丁目駅2番出口より徒歩5分
011-612-9003
Lunch(土・日・祝日のみ)
12:00~15:00(LO 13:30)
Dinner月~土
18:00~24:00(LO 23:00)
定休日:毎週水、第二休
できるだけ要予約

地図

*北海道に関する情報はオールアバウト北海道ガイドの小西由希さんのサイトをぜひご覧いただきたい。
  • 前のページへ
  • 1
  • 2
  • 3
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※メニューや料金などのデータは、取材時または記事公開時点での内容です。

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます