シェフの動きは手に取るように見える。 |
時間が経つのも忘れて
ワインはシャンボール・ミュジニイを。ちょっと驚いたが、輸入物は「グロワーズワイン」。成城に住む田口朝一さんが自らブルゴーニュに仕入れに出掛け、そして都内だとしたらきちんと管理しているところにのみ卸す、知る人ぞ知るインポーターだ。いや、インポーターと言うとどうも軽々しくていけない。数少ない日本の『ワイン商』と言っていいだろう。その田口さんが扱うワインと小樽で出会えたことは幸運だった。ピュアでよどみのない、自然なワイン。身体にすいーっと染みこんでいく昔ながらのブルゴーニュのワイン。その香りが暖炉の暖かさと交じり合い、料理もワインもそして空気も揺るやかに一体となる。
このダイニングはかつてはビリヤード場だったと聞いた。当時としたらハイカラな遊びだったのかも知れない。お手洗いは2階にある。急な階段を上るとそこは大正から昭和にかけての時代がそのまま残っている不思議な空間だ。工事中のため居室は閉じられれているのだが、ちょっとした襖の隙間から当時の空気が漏れてくる。トイレの窓、洗面台など一つひとつにその時代の価値が染みこみ、先人の繁栄の跡を忍ぶことができることに強い刺激を受けてしまう。
レトロな雰囲気が堪能できる |
歴史ある日本家屋の中で静かに、そして熱く暖炉の火を灯す料理人、花形信行氏。小樽は運河や寿司だけの町でないことを彼は皿の上の料理ではっきりと主張する。
次回は海宝楼が再開してようがしてなかろうが季節を変えて訪れてみたい。
■ラ・シュミネ
小樽市東雲町1-19 海宝樓 地下1階
0134-33-1885
地図
*北海道に関する情報はオールアバウト北海道ガイドの小西由希さんのサイトをぜひご覧いただきたい。