フレンチ/オーベルジュ

帯広と美瑛、そして(北海道)

旅は岡山、高松、島原、熊本から一気に北海道は帯広に飛びます。雄大な自然の恵みに包まれたその料理はこれまで出会ったアスパラの中でも最高とも言えるものでした。

嶋 啓祐

執筆者:嶋 啓祐

フレンチガイド

北海道
これからが一番過ごしやすい季節だ

食べるためだけに北海道へ

「北海道には旨いもん、ないよなあ。」18年間住んでいた北海道をあとにして上京した18歳の時に少なくとも私はそう思っていた。当時の道産米は本当に悲惨だったのだ。そのほかの素材はまずまずなのだけど、種類が少なく、ごくごく限られたものだけが美味しい。北海道と言うと雄大な景色のイメージ先行で、実はたいしたものなんかないんだぞ~なんてつい最近まで結構斜に構えていたのだった。

しかし、今は違う。

現実を見ると北海道の就農人口は年々減り続けている。06年から07年にかけて新規就農者は6.5%も減ったという。跡継ぎの減少、要は息子が札幌や東京で第三次産業に就いてしまうといったことが大きな理由のようだが、そう悲観する事柄ばかりではない。道外、特に関東や近畿地方からの就農者は増えており、そうした方々が歴史の浅い北海道の農業に少しづついい影響を及ぼしつつある。

北海道の農産物は明らかに変化した。そしてその変化はいい方向に変化し続けている。特にアスパラと羊、わずかばかりのワインがいい例だろう。フランス産のアスパラが季節的にその役目を終えるちょうど今、待ってましたとばかり北の台地よりアスパラが届く。

フランス料理
コムニの朝食。素材はすべて地元のもの。
しかし、野菜だけ例にとると、悲しいかなそれがどんなに上手に料理されようが、三ツ星レストランの豪華な皿に載ろうが現地で味わうものにはとうてい勝つことができない。

それは生命の根源である『水と空気』が全く違うからだ。

東京が梅雨に入ろういうとき、北海道は帯広、美瑛、生まれ故郷の砂川、小樽、札幌へ私にとってはちょっと長めの旅に出た。所々で友人達と合流離散を繰り返す4日間の「食の旅。」最初は昨年も訪れた帯広郊外は幕別町にあるオーベルジュ・コムニからスタートだ。
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