写真も効果的に使われている |
料理とテクノロジー
どんなことが書かれているかを簡単に紹介すると、世界中で成功を収めた料理人の「成功の鍵=KSF)はいったいどこにあるかを自身の綿密な取材によって解きほぐしていく内容になっている。登場する人物は、NYのデイヴィッド・ブーレイ、スペインのサンティ・サンタマリア、フランスのアラン・デュカスとミシェル・ブラス、そして日本からは京都の料亭、瓢亭の高橋英一氏の6人だ。
これはそれぞれが持つレストランの何が旨いとかそういう評論本ではない。料理人になったきっかけから、チャンスをどのように掴んで、どのように努力して現在の立場に上り詰めたのか、そして、その成功の鍵を「テクノロジー」という言葉を使ってわかり易く解きほぐしている。
むろんスペシャリテと言われる料理がどういうプロセスで作られているのか、と言うことも専門用語を極力使わずに解説されている。ジャンルを問わず次代を担う料理人を育てるという著者の非常に中立的な立場に立つ表現が何故か心地よく耳に残る。
読んでいってわかるのだが、料理人の考えは非常にシンプルでわかりやすい。そのシンプルな言葉の中に、様々なビジネスシーンに共通する本質を探り出すことができる。
調理技術にセオリーはあるがゴールはない |
具体的にそれぞれの料理人が持つテクノロジーがどこにあるのかは、ぜひ読んだあとに感じていただきたいのだが、その言葉以外にも実に示唆に富んだ表現がたくさん散りばめられている。
「記憶ーどこに向かっているかを知るためにもどこから来たかを忘れてはいけない」
素材を生かすという意味も今一度深く考えたい |
デュカスのページをめくると、彼が「世界中で新しいコンセプトでマスコミ受けしやすいレストランを展開している流行の料理人」であるというイメージとはまったく正反対でであることが理解できるはずだ。
「料理における真のクリエイションとは皿の上に仕上がった完成品にあるのではなくて、その料理を作るプロセスにあると考えている。」スペインのサンティ・サンタマリアは寿司屋のカウンターをネタにこう話す。
ミシュランでは寿司店が多くの星を取ったが、それはやはり日本の文化としての寿司をミシュランなりに高く評価したのだろうか。