フレンチ/全国のフレンチ

思い出の一皿に会うために(西湖)(3ページ目)

夏を迎える前に必ず思い出すのが河口湖隣の西湖畔にあるレストランボア。時代を感じさせるごく普通の喫茶店のようなところには私の心に深く刻まれた、一皿の料理がある。それはフランス料理そのものだった。

嶋 啓祐

執筆者:嶋 啓祐

フレンチガイド

フランス料理
15年前の味覚が蘇る

驚きの鹿肉ハンバーグ

客は私達のみ。メニューを見ると高額なステーキが消え、何故かラーメンが(笑)。

やや複雑な表情になりつつもスープとサラダと鹿のハンバーグをオーダーする。といっても想定外の客だったようで、それしかなかったのだ。

スープは15年前と同じ味わいが深く、ほっとできるものだった。600円の平凡な料理。でも他ではなかなか見ることはない不思議なスープ。卵とトマトとクリームが重なり合い、気が付くと小さなココットはあっと言う間にカラだ。

フランス料理
単なるドレッシングと侮ってはいけない
平凡な野菜サラダも手のかかったフレンチドレッシングで見事に生き返る。このあたりが長岐に亘りホテルで腕を振るったシェフのさりげないテクニックが垣間見える。

鹿のハンバーグは味わい深いものだった。癖のない鹿肉で時期的に脂分がないはずなのが、見事なほど玉葱と繋がっている。そのバランスと食感はなるほどお見事。


「どうですか、いいでしょう、鹿のハンバーグ!!」とジョッキ抱えて現れたシェフは隣のテーブルで待つ友人達とぐいぐいとビールを飲み始めた。「本州の鹿は蝦夷鹿と違って脂身が少ないので、こうしてハンバーグにするとき
フランス料理
これも純然たるジビエ料理だ
には必ず牛肉の脂分を混ぜるんだ。鹿80にして牛は20位かな。そうすると実に味が乗ってさ、旨いのができるんだ」。釣りの帰りの格好のまま隣のテーブルとしばしの鹿談義。ヒメマスのことも聞いたが春と秋にオンメニューするそうだ。今年の春のものは小ぶりでなかなか難しかったとのこと。自然相手のメニューだけに簡単ではないようだ。

いつしかあたりは15年前と同じように音のない夕闇に包まれていた。

ボア
山梨県南都留郡富士河口湖町(西湖地区)西湖2169-1
TEL 0555-82-2839
アクセス 国道139号線風穴から西湖方面へ。西湖周回道路南岸。
期間 11:00~21:00
月休(祝日の場合は、その翌日)夏期は無休

さらに今回はおまけで河口湖の街中にある究極のイタリアンをご紹介!!
  • 前のページへ
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 次のページへ

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます