フレンチ/全国のフレンチ

思い出の一皿に会うために(西湖)

夏を迎える前に必ず思い出すのが河口湖隣の西湖畔にあるレストランボア。時代を感じさせるごく普通の喫茶店のようなところには私の心に深く刻まれた、一皿の料理がある。それはフランス料理そのものだった。

嶋 啓祐

執筆者:嶋 啓祐

フレンチガイド

当たり前だが40代を迎えた私にも20代後半というひとつの時代があった。社会に出て、世の中の浮き沈みを知り、バブル時代にそれと気づかず仕事に没頭しつつ、寝る時間を削って遊んでいた頃だ。その頃は親しい友人達と季節を問わず、ほぼ毎週末と言っていいくらい河口湖の別荘に集まっていた。料理を作ったり、釣りをしたり、花火をしたり、野球をしたり、大工仕事をしたり、それはそれは楽しい時間だった。

友人が所有していた1LDKのマンションは当時で築20年以上とは言え、ベランダからの眺めが富士山と湖を両方見ることが出来る最高のロケーション。

別荘オーナーの友人の周りには職業問わずさまざまな友人達が集まり、当時友人の少なかった私などは随分そこで刺激をもらったものだ。そのうち何人かは結婚し、何人かは別れ、いつしか河口湖に集まるという日常は家族という考えにそぐわなくなり、いつしか出かけることはなくなってしまった。

しかし私にとって河口湖とその周辺は当時の思い出の場所であることに変わりはない。

料理が得意な川島君がいたおかげでよく自炊をしていたのだが、近場のレストランに出かけることも時折あり、誰の勧めだったか忘れたが、西湖のほとりにあるレストランボアが僕達のお気に入りとなっていた。

先日、その当時のVTRが出てきて懐かしく見ていると私はどうしてもボアに行きたい衝動を抑えることができなくなってしまっていた。

それは「ある料理」を食べるためだけのために。
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