フレンチ/東京のレストラン

ロオジエ(銀座)

ブルーノ・メナールが厨房に立つ銀座フレンチ、「ロオジエ」。圧倒的な存在感はレストランを文化として捉えるその姿勢だ。全ての調和が取れた日本を代表するレストランはハレの日にぜひ。

嶋 啓祐

執筆者:嶋 啓祐

フレンチガイド

レストラン
オレンジを煮詰めたソースの香りが初夏を彩る

次は誰か?

ロオジエのシェフ、ブルーノ・メナール。稀代の料理人ジャック・ボリーからロオジエのシェフを引き継ぎ、そろそろ1年が経とうとしている。

04年当時ジャック・ボリーの引退が囁かれる中、グルメやレストランジャーナリズムの興味はただ一つ。

「次は誰か?」

フランス国家最優秀料理人(MOF、日本で言うと人間国宝か)である彼はその名に恥じない、否、遥かに超える料理と万人を引きつける魅力的な個性をふりまき、東京におけるフランス料理文化の一つの時代を作り上げた。それだけ偉大な料理人の後を継ぐシェフに興味を持たないわけがない。

私の想像だが、2005年7月某日ブルーノ・メナールが厨房に経った日、彼には多くの『敵』がいたはずだ。一つはキッチンスタッフ。そしてホールスタッフ、最後にロオジエに足を運んだ多くのゲスト。ロオジエで働くスタッフの立場に立つと、上司が変わることは非常に大きな意味を持つ。そこには必ず過去との比較が付きまとう。価値観や考え方、仕事の進め方等々、日々仕事をしていく上で変化に人間は時として大きな抵抗をしがちである。

それだけにブルーノ・メナールにはとてつもなく大きなプレッシャーとストレスがあったはずだ。それはきっと彼にしかわからず、外からはまったく想像すらできないものだろう。

銀座
エネルギッシュで表現力豊かに料理を語る
しかし彼は平然と語る。「ボリーの後の席を任せられるなんて名誉なことだし、大きなチャレンジだと思ったよ。」そろそろ一年が経とうとしているが、ロオジエは昼夜問わず多くのゲストで賑わっていることからも、すでにメナールの料理はこれまでのゲスト、そして新たなゲストに着実に受け入れられているとみていいのではないか。

ブルーノ・メナールは1962年ロワール地方のトゥールに生まれる。山羊のチーズ、兎、鴨のコンフィ、ロワールのワイルドサーモンなどフランスのおいしい食材に囲まれて育った彼はショコラティエの父、父方母方の双方共に料理人であった祖父を持つ。家族みんなで市場に出かけ、おばあちゃんの作るローストチキンなどを懐かしく語りだす彼の表情はとても素直だ。料理人に囲まれて育った彼にとって、物心が着く15歳の頃には料理の世界に入ることは自然の成り行きだったという。
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