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シェフの意気が伝わるメニュー表記

圧倒的な存在感

1986年の開店から20年と言う年月が流れた。しかしフレンチであれ何であれ普遍的なものは変わらない。アラン・デュカスは語る。「真面目にやっている料理人か、そうでないかのどちらかだ。」不真面目なレストランや気を抜いたレストランは最初だけもてはやされるものの、3年も続かず市場から消えていく現実。これはある意味とても公平なことだ。

ラブランシュが青山に開店したのが86年。バブルが始まる直前のことだ。それから今日までの20年の間に変化、改革といった言葉が留まるところなく語られ、そして世の中はいい方にも悪い方にも変わっていった。

80年代に入り、ひらまつ亭やクイーン・アリス、アピシウス、シェ・イノなどが開店し、ホテル内にあるフレンチから街の中に広がり始めた時期でもある。一方、一世を風靡した西麻布はビストロ・ド・ラ・シテのシェフ勝又氏が箱根にオーミラドーを開店したのも86年だった。その時代はごく一部の顧客しか知らなかったフランス料理というものがゆるやかに広まっていった頃だ。

青山
スープ一つとっても美味しさが身体に染み渡る
オーナーシェフの田代和久氏は食後にいかつい躯体を厨房からダイニングに移す。料理人の存在感とはこのことか。特に何を話すわけでもなくひと言の挨拶をもってテーブルを回る。しかし、その一瞬ながらシェフの表情を伺うだけでこのレストランで味わう料理が、いついかなるときに訪れても決して変わることがなく、安心して楽しめる稀有なレストランであることを知るだろう。

夜景が綺麗とか、内装がモダンでお洒落とか、そういった表現はできないがあえて言えば年季の入ったシックさというところか。しかしそんな表現がどうでもよくなるほど料理も迫力に満ち溢れている。それはボリュームとか盛り付けとかではなく、調理された素材の香りが五感すべてに迫ってくることによる。これは決して誇張表現ではない。