Eating with Creativity
編集長の君島佐和子と申します。皆様、本日はお忙しい中、お運び頂き、誠に有難うございます。お集まりの皆様には、今日までの間、多大なるご支援を賜りましたことを、まず最初に御礼申し上げたいと思います。皆様のご支援がなければ、今日という日は迎えられなかったというのが私たちの今一番の思いです。本当に有難うございました。
意気込みを感じる編集者のスピーチにゲストは引き込まれたはず |
イタリアの北部ピエモンテ州のビエッラという小さな町で、ブドウを一粒一粒洗濯バサミで干しながら甘口ワインを造っている生産者。
半世紀以上にわたって、毎朝5時に起き、365日バターと2種類のチーズを造り続けている女性。
世界中に22店舗のレストランを持ち、ミシュランの星を合計12個持つフランス人シェフ。
ワイン界の常識に疑問を唱え、馬で畑を耕すなど徹底した自然農法でブドウを育てるワインの生産者。
料理の世界に分子式を持ち込み、レシピをすべて数式で記す科学者。
「今、料理に求められる条件はデザインである」と語るフランス人シェフ。
スペイン産やイタリア産など味の異なる何種類ものイワシを扱うアンチョビー屋のおじさん。
毎日同じようにガス釜でごはんを炊き、青菜のおひたしときんぴらゴボウを作り続けている麻布の小料理屋のおかみさん。
いずれもが、食の大地にしっかりと足を踏みしめて、伝統を見据えながら、新しい地平を切り開こうとしている人たちです。
このような人々がいること、その人たちがどんな仕事をしているのかを伝えたい。それが、新雑誌『料理通信』創刊に込めた私たちの思いです。
マーケットは今、「簡単」や「便利」や「節約」を提供してくれる商品で溢れています。
包丁がなくても家での食事に困らないし、外食ならレストランガイドが良い店を点数付きで教えてくれます。
知識がなくても、技術がなくても、時間がなくても、コネクションがなくても、食べるのに困らない時代です。
ありがたい反面、つまらない気もします。
自ら開拓する楽しみ、習得する喜びが失われてしまっている、と私たちにはそう思えるのです。
手間には理由がある。だから、おいしくなる。
何も知らないで食べるより、背景を知って食べれば、味わいはもっと深く感じ取れる。
自分の価値観でレストランを選び、料理やワインを選んだり、食品の安全性や質の良し悪しが自分で判断できることは、人生の重要事項です。
私たちはそう思います。
「食べる」という行為に能動的に取り組む生き方を提示したい。
Eating with Creativity
創造的に作り、創造的に食べる。
私たちは、『料理通信』のテーマをこのように掲げたいと思います。
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創刊ゼロ号は定期購読申込者にのみ配布されるプレミアムな雑誌である。申込みは料理通信社のブログ、TRIPPA通信からメールにてお申込み下さい。