いよいよワイン選び
料理のオーダーが終わるとソムリエがうやうやしくワインリストを持ってくる。メニューがシェフの誇りだとするとワインリストはソムリエの誇りと存在価値そのものであると言ってもいいだろう。なんだかわからなくても、まずはきちっと眺めてみようではないか。飲んでなければ酔って眩暈がすることもないだろう。もしもワインなんて「飲んでるだけでからっきしわからんわ」という御仁は価格帯と好みの味わいを伝え選んでもらうといい。前回の記事にも書いたが、「料理に合うワインを」なんて余りにも主体性のない問いかけはしない方がいい。聞くならば「このワインとこのワインの違いはどうか?」というように一歩踏み込んだ方がいい。そして大切なのはどんなワインを飲みたいのか?だ。好きなワインを頼むのが一番。香りが華やかで~と思えばブルゴーニュのピノノワールを頼めばいいし、重くてしっかりとした味わい~となればボルドーやラングドックのものを探してもらうといい。
要は何か一つでも具体的な球を投げることがポイント。それがソムリエとの良好なコミュニケーションの始まりなのだ。話の流れからちょっと知らないワインに冒険してしまおうかな、ということにでもなれば、それはそれで新しい発見がきっとあるだろう。
ワインが大好きで、「ワインスクールに通ってエキスパートの資格も取ったしぃ~」という方は全体をゆっくり眺めたい。そのリストには良い悪いはともかくワインを選んだソムリエの心が隠されている。そして、そのストーリーを解きほぐしたい。
そのポイントは?
ストーリーを感じ取るポイントはいくつかある。まず最初はシャンパーニュのラインナップに視線を合わせたい。今や年間600万本も輸入されるシャンパーニュ。シャンパーニュ騎士を叙任するイベントも日本で行われるくらい人気化し、消費量が鰻上りに増えている。多分輸入量伸び率でいうと日本がトップクラスではないだろうか。モエとドンペリとクリコしかなかった時代はとっくに過ぎ去り、今はいわゆる「地元の農家のおじさんが丹精込めて作った良質な作品」がたくさん手に入るようになった。そのような中、どっかで聞いたことがある銘柄ばかり、となるとソムリエが勉強していないか、インポーターや酒屋の言いなりになっているかのどちらかだ。
普段味わえないワインに巡り逢いたい |
ワインリストに逃げ場があるかどうかも大切だ。そこそこのレストランともなるとワインリストの右に並ぶ赤ワインは万円台がほとんどかも知れない。しかし、そんな中にぽろりと桁が異なるワインが数本あると、それを頼まなくても少しは安心するもの。レストランは一番価格が安いワインで外すことは許されない。しかし、今日はクリスマスのハレの日、となれば相手を気持ちよく酔わせる香り、味わいを持つワインを選びたい。このクリスマスの時期、私ならブルゴーニュだとシャンボール・ミュジニイのサンティエかレザムルーズあたり、ボルドーなら80年代のラランドあたりを探すだろう。多少値段が張ってもほんとうに美味しいものを楽しみたいものだ。
自分のペースでゆっくり楽しむの大切 |
さあ、デザートも終わるとワインの香りからエスプレッソの香りへとフレーバーチェンジの時間が訪れる。このあたりでクリスマスプレゼントの交換が始まるのだろうか。この年になると私もちょっと恥ずかしいが、若かりし頃は、ドキドキしながら「はい、クリスマスプレゼント。。。」というほのかな記憶を思い出す。
中身はキャンドル。「いつか2人で灯したいね」と。それは22年前のクリスマスイブの話。しかし悲しいかな、そのキャンドルに灯が燈されることはなかった。しかし、今この記事を読んでくださっている皆さんには絶対にこんなことがないように心から願いたい。
ワインは最初は2人の前に立ちはだかるかもしれないが、そのうち料理の陰に隠れ、そして2人の気持ちの中に染み込んでいくものである。ワインリストを恐がらずに正面から向き合い、心に染みこむ思い出のワインを選びたいものである。
今年のクリスマスは雪が降るかもしれない。東京の雪景色もまんざら捨てたものではない。程よい寒さが相手との距離を近づけるものである。店を出て空を見上げるとふわふわと雪が降っていたとしたら、最高のクリスマスではないか。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
ほとんどのレストランが予約で一杯のこの季節。ラ・バスティードはまだメディアにはほとんど取り上げられていないので、このクリスマスの時期はまだ予約が取れます(12月21日午前11時現在)。読者限定!!密かに教えたいレストラン、バスティード。
■ラ・バスティード
港区三田5-11-10
地図
電話:03-3453-1120
以前ラビラントのベーカリーがあったところです。
昨年書いたお薦めフレンチ一覧!!