味わいのスパイラル
ランチとディナーでは様子がまったく異なるのは都内でも随一かも知れない。昼は明るくカジュアルに、スタッフの靴もスニーカーだ。夜は銀座の夜景に包まれシックに、重厚に。メニューはもちろんワインリストも変わる。ふわっとしたメレンゲの中には細かな味覚の渦が隠されていた。 |
トップブランドのジョイントベンチャーとは言え、できたばかりなのでまだまだオペレーションにムラがあるのは致し方ないところ。ワインリストに早くも品切れが多数あったり、ワインの説明が機械的で「楽しくなかった」り、したりするのも生まれたてだからか。生身の人間はどんな場面でも成長にはある程度時間がかかるもの。
単純素材を調理技術で驚かせるのは「デュカスの魔法」か? |
調理技術の時代へ
アラン・デュカスは素材へのリスペクトという言葉を使うが「料理の美味しさ」は素材が一級品であることを前提とした技術レベルの高さにある。今や20年前とは違って空輸で新鮮な素材が全国から集る時代だ。保存技術にしても格段の進歩を遂げている。新鮮な素材を活かすも殺すも料理人の腕、センス、調理器具も含めての技術とそしてバランスなのだ。ベージュ東京の料理はそんなことを感じさせてくれる。細かな話だが席に案内されるとシャネル(多分)の香りが漂うおしぼりがサービスされる。バターは2種類。無塩のものと海鮮類が細かく刻まれた塩の強いものだ。料理だけでなく、テーブルの上にあるものすべてにこだわりと気遣いが感じられる。
帰りがけにキッチンを見せてもらった。(フランスの高級店では掃除の途中でも気軽に見せてくれる)フランスから直接持ってきたという最新のキッチン設備はすべて電気調理器。これにより火加減が一定に保つことができ、ムラがなくなるという。そこは機能美の固まりのような別世界だった。
デザートは創造性溢れるもの |
ユニフォームはカール・ラガフェルドが特別にデザインしたもの。シャネルは男性用の衣類は作っていないので当然特注品となる。
まかないに日本食は出ない。近隣の某フレンチレストランから食事として取り寄せているとのこと。そもそも賄いという言葉がこのレストランにはないそうだ。すべてのスタッフがきちんとコストをかけた、ちゃんとしたものを食べているのである。
ゲストはことごとく名前で呼ばれ、フランス同様堅苦しい表情ではなく、いつも笑い顔が見える。とにかくオープンまでは想像を絶する毎日だったと聞く。お皿を200枚発注したが第一弾が届いたのはいいが中には半分も入っていなかった等々、アバウトなフランス的な仕事の進め方に戸惑いつつ、今となっては笑い話か。
ワインリストの充実はこれからか |
ランチタイムは6000円、8000円、11000円のコース、ディナーは17000円、22000円のコース料理(税込サ別)があり、2600円のアフターヌーンティーセットも用意されている。ハレの日のレストランと考えると妥当な値段だろう。
個人的に嬉しいのはサイトにある「基本的にレストランウエディング、貸切パーティーは承っておりません。」という一言。当面予約を取るのは難しいと思われるが、当日もしくは前日予約にトライしてみることを薦める。センスのいいレストランはほんの少しだけ美味しい席を残しておくものなのだ。
なお、セブンシーズの1月号にて「アラン・デュカス、美食の航海へ」という特集記事が素晴らしい写真と共に掲載されている。一見一読の価値がある。
■ベージュ東京
中央区銀座3-5-3 シャネル銀座ビルディング10階
03-5159-5500
ランチタイム 11:30~14:30 ラストオーダー
アフタヌーンティー 14:30~16:00 ラストオーダー、16:30閉店
ディナータイム 18:00~21:30 ラストオーダー、23:30閉店
全席禁煙