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ゲスト400が名シェフの美食に酔うその瞬間。 フレンチ三巨匠・食の饗宴(3ページ目)

8月25日夜東京ドームホテルにて井上旭・石鍋裕・鎌田昭男による食の饗宴が催された。日本のフレンチの歴史を語るとき欠かせない名シェフだが、その3人の個性が柔らかにぶつかり、そして溶け込んだ。

嶋 啓祐

執筆者:嶋 啓祐

フレンチガイド

拍手は料理人全員へ

真剣勝負の瞬間!
3人の巨匠の中でメインディッシュを担当したのはその井上シェフである。スペシャリテである「マリアカラス、子羊のパイ包み焼き」。ホテルならではの何本も一気に焼き上げるロースターは見事だ。次から次へと焼きあがるその風景は壮観ですらある。寝かせる時間も正確にコントロールされ、ソースの盛り付けまで今日一番の緊張の時が流れる。この料理にとってソースは命にも等しい。東京ドームホテルの稲葉シェフもソース担当として井上シェフのそばから離れることはない。

マリアカラス
井上シェフの超スペシャリテ
私の席にもメインディッシュが運ばれてきた。意外なほどマイルドだ。でも後味と言うか余韻は長いぞ。肉質は平均的故にこのソースとの絡みがすべてだ。厨房で見たあの大鍋にはどんな仕掛けがあったんだろう?もっと早くから仕込みを見ていればよかった。いや、休憩時間にこっそりと忍び込んでソースをカップに少し、今度の休日に肉を焼いてそれにかける分くらいはいただいてくればよかった!

すっきり上品さが特徴のリュイナール
シャンパーニュはリュイナール。その他白ワインはプイイ・ロシェ。プイイ・フュッセの隣にある小さなAOCで希少価値のあるもの。赤ワインはドモワゼル・ド・ソシアンドマレ。時間と共に柔らかくなり、それなりに存在感を発揮している。しかし私は最後までリュイナールで通したがそれはそれで正解だった。

メインディッシュのあともチーズ、デザートが続く。予定ではチーズ、デザート2種類まで付いて2時間とあったが、これは土台無理な話か。巨匠3人と山本益博氏のトークショーされに組み込まれているのだから。

そのトークショーはそれぞれの昔話や今後の店舗展開について見事に語られることになった。満腹感に浸るゲストは店舗を広げる自慢話の中身より、それぞれのシェフが少しお酒にも酔い、ざっくばらんな人柄がステージ上でも垣間見えたところにとても親近感を覚えたことだろう。

9時半になり、美味しい紅茶もなくなった頃、静かにお開きとなった。最後に今日の厨房を預かった料理人が一同に会して、ゲストからは大きな拍手がプレゼントされた。

名誉鉄人シェフも気さくにテーブルへ。
大イベントであったが、3人の巨匠料理人を技がそこそこ披露され、あけらかんとしたトークにゲストも満足したに違いない。最後に山本益博氏がいいことをおっしゃっていた。
「美味しい料理を食べるのではなく、美味しく料理をいただくことをもっと意識して楽しみましょう」 と。

強烈な巨匠シェフのことを思い出したらやっぱり羊が食べたくなった。
11月中旬にシェ・イノは移転するようなので、その前に久しぶりに行ってみたくなったことだけは確かだ。
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