フレンチ/東京のレストラン

【改装】ベルエポック(神谷町)

ワインダイニング ラ・ベル・エポック / バロン オークラとして営業中

嶋 啓祐

執筆者:嶋 啓祐

フレンチガイド

ここ数年、外資系のモダンなホテルが人気だ。しかし日本のホテルも負けてはいない。帝国ホテル、ニューオータニ、ホテルオークラといったところはレベルの高いサービス、立地、設備で変らず高い評価を受けているようだ。

特にホテルオークラといえば、ホスピタリティ溢れたサービスに定評があることで有名である。しかしその立地は決して恵まれているとはいえない。しかし、一度ここに宿を取ると、ほとんどがリピートするといわれるサービスレベルの高さはしっかりと維持されている。

今回ご紹介するレストランはそのホテルオークラ内のメインダイニング「ラ ベル エポック」。重厚な歴史と品格を感じさせる大人のフレンチとして存在感に溢れている。
絢爛たるアールヌーボーの世界を感じさせる内装を持つ、数少ないレストランだ。ここには街場のレストランでは味わえない重厚さがある。


別館12階で降りて、右手に夜景を見ながら、ふんわりした絨毯を進み店内に辿り着く。席と席の間も余裕があり、ゆったりとした丸テーブルからは眼下に都心の夜景も楽しむことができる。ピアノ演奏もゆるやかに奏でられるが、良く解釈すると古き良き時代そのままか。


さあ、料理。アラカルトが中心だが、この日はお薦めのコースを注文。
メニューデギュスタシオン
サーモンのユール仕立て
スモーキーな香りのヴィネグレット

フレッシュフォアグラのポワレ
オレンジのコンフィ添え

旬の貝とラングスティーヌ
軽いアイスクリーム煮アニス風味

子羊のローストプロヴァンスの香り
ピペラードのガトー 焦がしバターのジュ

チョコレートのグラタン
コーヒー風味のクリーム添え

コーヒーと小菓子

まるで古典的フランス料理の教科書に出てくるかの料理が並ぶ。普通はメニューに羊のローストとあっても、それはそれで皿の上での「見せ方」というものがあり、毎回どういった盛り付けなのだろうかという期待感がある。しかしここではそういった見せ方の工夫よりも、食べた時のゲストの驚きの表情を得ることに力を入れているようだ。

というのは、羊肉が非常に上質で脂身も身の締まりからみても間違いなく最高級のもの。ロースト加減はとても丁寧で、香りも十分に楽しめるとくる。クラシックな雰囲気に堂々とした料理が、見事に溶け込んでいる。デザートも見た目は特に印象に残るものではないがチョコレートのグラタンは良質のカカオを使用した、品良く甘い逸品。

パンも美味で、バターもAOCを取ったもの。細部にまでまったくもって隙がない。特にこのコース料理には暖かく計算されたストーリーを感じる。皿同士の味が決して重ならず、飽きさせず、かといって反発することのない味わいのストーリーといったところか。

ワインはオークラブランドのボルドーワイン。ちょっと若いながら、デカンタにより見事な香りを引き出す技術は素晴らしい。またそんなワインをサービスしてくれるソムリエの方が繰り出す年季の入った薀蓄はとても楽しいし、若いスタッフのサービスも心地よい。ゆったりとした空間でクラシックな料理、最高水準のサービスで普段感じることのない、満ち足りた気分で席を後にした。

今や個性溢れるフレンチがいろいろなところにある時代だ。それだけにベルエポックにはこのままのクラシックフレンチにこだわり続けて欲しい。

(写真が暗いのはストロボを使わずそのままの明るさで撮影したためです。)

港区虎ノ門2-10-4ホテルオークラ別館12F
03(3505)6073
11:30~14:00/17:30~21:00(土日祝はディナーのみ営業)/月休
予算の目安は一人25000円程度から
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※メニューや料金などのデータは、取材時または記事公開時点での内容です。

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