ターゲットは誰だったのか
マーケティングの世界では選択と集中という言葉を良く使います。Xbox360が選択するべきターゲットはどこなのでしょうか |
まずハイデフ基調としたCM展開ですが、これはHDTVを持っている人達に対するアプローチであると考えられます。そうすると広いリビングとある程度の金銭的余裕のある高齢層やファミリー層が考えられますが、前述したとおりソフトラインナップからもちょっとそこには無理があります。もうひとつ考えられるとすれば、環境や懐具合に関係なくそういったAV機器にお金を注ぐマニア層といったところでしょうか。結果的に非常に狭い範囲の人たちを狙うことになってしまっているように思います。
それからTOKIO。これはおそらくXbox360全体のイメージアップの為に起用されたものだと考えられます。つまり、メジャーなタレントを起用することによってメジャー感を出すというものですね。ですから、これはあまり厳密なターゲットの無い広く一般に対するアピールでしょう。
そしてブルードラゴンなどの有名クリエイターの起用。ゲームを全くしない人は坂口氏の名前を聞いても誰のことだかわかりませんね。ただ、ファイナルファンタジーやドラゴンクエストの名前はゲームをしたことのある人ならほとんど知っているでしょう。つまり、これはPS2でファイナルファンタジーやドラゴンクエストをやるようないわゆるライトゲーマーと呼ばれる層を狙っていると言っていいのではないでしょうか。
こうして並べてみると、どうでしょう? バラバラですね。さらに、ここにXbox360が豊富に揃えている海外ゲームと、それらを使ったオンラインゲームサービスが加わります。この2つは明らかにゲームをじっくり楽しむコアゲーマーと呼ばれる層をターゲットとしています。どうしても、ターゲットが絞りきれていないような印象を受けてしまいます。マーケティングの基本である、誰をターゲットとして、どんな価値を提供するのかということを考えた場合に、現状ではターゲットも、提供する価値もバラバラになってしまってはいないでしょうか。これでは折角大規模な宣伝や販促を行ってもなかなか効果を得ることはできません。
Xbox360の武器
このターゲットのブレは、Xbox360が日本で抱える大きな問題を示唆しています。そもそも、Xbox360が持つ武器と言えば、MSの本拠地である北米のゲームメーカーのソフトと、世界一のPCソフトメーカーであるMSが展開する優秀なオンラインゲームサービスであるXboxLiveにあります。そのどちらも、北米のゲームユーザーは勿論、私達日本人にとって、未知のゲーム体験をもたらす素晴らしいコンテンツであり、そう簡単にWiiやPS3が真似できるものではありません。しかし、日本ではそもそも海外発のゲームが売れる市場が構築されていません。家庭用ゲーム機でオンラインゲームをするというのも、極一部のゲームにとても詳しい層だけです。現状では、これらの武器を前面に押し出すと、Xbox360はメジャーになれないのではないかという不安もあるわけです。結果、今の状態は、Xbox360の武器を使わず、日本の市場にマッチするものを手探りで探している為、色々な所でターゲットもブレていくという状態になってはいませんでしょうか。
次世代ゲーム機戦争において発売日で1年先行したはずが、気が付けば大きく出遅れてしまったXbox360ですが、挽回のチャンスはあるのでしょうか。私は、十分にあると思います。戦う武器が無い、というのであれば無理ですが、先行した1年で非常に強力な武器を蓄えています。海外発のソフトは発売1年たってハードを使いこなしたものが充実してきています。カプコンのロストプラネットやデッドライジングのように、北米向けに開発し、逆輸入のような形で日本でも売って成功する事例もできました。XboxLiveはさらに充実を図り、ハード自体は非常に成熟してきています。
私は最初、日本においては1年先行したことはあまり有利に働かなかったようなことを申し上げました。ですが見方を変えれば、日本の販売において効果が薄くてもいち早く北米に市場を確保できたこと自体は、Xbox360の大きな武器になるはずなのです。
それらの武器を活用する為には、大仕事が残っています。如何にして日本に海外ゲームの市場を作り、オンラインゲームを普及させていくか。今まで海外ゲームの市場が日本でできあがっていない為か、MSはこのことについてあまり積極的に取り組んでいるようには見えません。しかし、誰も成功させていないからこそ、そこにはチャンスがあります。MSはPSやPS2の成功例から日本市場をよく研究していますが、それはあくまでPSやPS2の話であり、Xbox360には必ずしも当てはまらないということを今までの結果が示しています。Wiiが独自の市場を開拓したように、Xbox360もXbo360らしく売る為に、発想を転換し、独自の市場開拓をしていく必要があるのではないでしょうか。
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