メジャーマラソンのなかでは歴史は浅い
バッキンガム宮殿から200mほどにゴールゲートが |
公園ではとりあえず屋台でお腹をなだめる |
「拍手がすくないぞ」とオベーションを催促。このランナー50-54歳カテゴリーで2位、2:39:32秒の強者。余裕あります |
速い女性ランナーもかなりいる。このランナーのゴールは2時間40分くらい |
日本に大和魂あれば、彼の地にはジョンブル魂あり。愛国心に富んだこのランナーの記録は2:53:47 |
両側の観客が迫ってくるように感じられる大観衆 |
おじいちゃんランナーなどとバカにしてはいけません。アンソニー・ガスケルさんは65-69歳カテゴリーで1位、記録は3:05:13! |
前史はあるにしても、資料に第1回と記されているのは1981年。男子はインゲ・シモンセン(ノルウェー)とディック・ベアズリー(米国)が1位同着(2:11:48)、女子は東京国際女子マラソンの第1回、第2回大会を連覇したジョイス・スミス(英国)が2時間30分を切る好タイム(2:29:57)でテープを切った。ニューヨークマラソンに触発されて始まった大会ではあったが、ロンドンマラソンは最初からエキサイティングだった。
ベアトリス王女もチャリティ参加
1984年、ロンドンマラソンの大きな特徴でもあるチャリティ要素が強く打ち出され、ロンドンマラソン公式チャリティ組織が認められる。以来公式に認められたチャリティ組織は47を数える。公式チャリティ組織は大会を利用してチャリティ基金を集める。心臓病、がん、危機にさらされた子ども、スポーツ障害などなど。「ザ ワールド モスト ヒューマン レース」と呼ばれるロンドンマラソンの精神を端的に表す活動ともなっている。今年は、英国王室王位継承権第5位の立場にあるベアトリス王女が、「危機にさらされている児童救済」基金のために大会に参加して話題になった。プリンセスをはじめとして、チャリティのために有名な俳優、レーサー、アスリート、タレントなどがセレブリティとして参加し、募金に協力している(何のチャリティに協力するのかをそれぞれが明らかにして参加する)。ニック・アンスティ(ロンドン市長)は、4時間の予想タイムを宣言し16回目のマラソンとなる今年の大会に挑んだ。
世界遺産を巡るコース
コースはグリニッチパークをスタートしてバッキンガム宮殿前までの26.2マイル(これだけは、メートル法に慣れた日本人には困る。5kmごとのキロメートル表示はあるが)。基本的にはテムズ川沿いのルートで、カティ・サーク号、タワーブリッジ、ロンドン塔、ビッグベン、ウエストミンスターなどの世界文化遺産3カ所を含んだ名所とビジネスの先端エリアも巡る。ヨーロッパのコースによくあるような古いビルとビルの間をすり抜ける路地のようなところもあって、そんなところでは選手は両側から迫る応援に鼓舞されることになる。路面が悪いのもヨーロッパのコースの特徴か。舗装が硬いだけでなく、石畳やつぎはぎだらけの路面はランナーを悩ませる。よくこんなコースでラドクリフは2時間15分25秒などというとてつもない記録を出したものだ。そもそも、マラソンは古都をステージにした大会ほど人気があるから(要するにランナーは観光ルートのマラソン大会が好きなのだ)、これは人気を犠牲にして舗装の良い振興開発地にコースを移さない限り解決しない問題だろう。参加者は石畳の路面を喜ぶ気持ちが必要だ。
応援の声と音が右から左から上から
応援は最初から最後まで満艦飾というわけではないが、応援移動に交通便利な場所はすごい。横断橋も歩行者の立ち止まりを規制していないからそんな箇所ではコースの両サイドだけでなく、頭の上からも叱咤激励の音が降ってくる。音による応援はベルリン以上か。ベルリンではクラシックやジャズバンドの演奏もあったが、ロンドンではブラスとドラムバンドが多い。彼らが応援する最上のステージはガード下だ。ガード下の暗闇は大音響が支配する。ランナーは大音響の暗闇に飛び込み大音響の振動で暗闇から「行ってこい」とはじき出される。
そして、チャリティ団体もスポンサーも音響小道具を配って歩く。何万本のスティックバルーンが打ち合わされたのか、何万個のホルンが吹き鳴らされたのか。