脚長が違って走り込めなかった小崎まり
選手送迎もロンドン名物赤い二階建てバス |
「彼女は遅咲きなんですよ。マラソンは長い距離を走り込まなきゃだめだけど、長い距離を練習することができなかったんです。脚の長さが揃ってきてやっと長い距離を走れるようになった。それからまだそんなに時間がたっていないですからね、まだ伸び白がある」と三村氏。
レースは午前9時にスタート。女子エリートの部は、男子エリートや一般の部より45分前にスタートする。日本の女子マラソン大会同様、男子ランナーのリードが受けられない女子のみのレース仕様で、これもロンドンマラソンがこの大会の女子記録の権威を誇示する理由になっている。
しかし、一般ランナーにとって絶え間ない大声援とロンドンの名所巡りをするこのコースの評判が高いのにひきかえ、エリートランナーにとって走路は必ずしも走りやすいとはいえない。その理由の一つが古都ならではの石畳、ヨーロッパ特有の硬い舗装、テレビでもご覧になったと思うがつぎはぎだらけの路面、道幅は広くなったり路地裏のようになったりと千変万化、コーナーも多い。このコースをペースランナーは、2時間20分のゴールタイムペースで引っ張る。
マメができやすいコースだが―
トップ集団の約20km地点通過。小崎選手は後ろから2番目の好位置に付けていた |
この日もスタートする頃から小雨が降りだし、小崎選手のシューズを作り続けてきた三村氏もちょっと心配げな表情だ。気候のコンディションはよかったが、路面コンディションは悪い。
「レース用のシューズは、コースの路面、ルートをよく調べて作ります。ヨーロッパの路面は硬いね。ロンドンは石畳もあるし。ロンドンはすでに6回来ておりその点はよくわかってます。それでも今日のように濡れたらスリップしやすいので、もちろん対策はしてますが心配やね。それからロンドンマラソンのコースはコーナーが多いから、マメができやすいです。それも考えます」
三村氏は、中間点手前の折り返してきて残り7km地点にもあたるタワーブリッジ袂近くで声援。小崎選手も期待に応え27、28kmあたりでは優勝したショブホワと肩を並べて先頭に立ち、30km手前までは2時間21分台ペースの先頭グループにぴたりと付いて走った。その後徐々にペースを落としたものの、ラストはペースの落ち込みを食い止め2時間25分43秒、9位でゴールした。
実際に小崎選手の話でも水たまりを除けたり、コーナーのたびに前を走る選手がコーナー側に寄ってくるので、レース中は気が抜けなかったという。しかし、シューズについての心配はまったくなかったとのことだ。赤羽選手は5kmでマメができ、爪が死んだという報道があったが、小崎選手は足には何事もなくフィニッシュできた。翌日はロンドン観光と買い物、それにこれがしたかったというホテルでの「お茶」と疲れを見せない。
「ちょっと力を余してしまいました。もっとタイムを短縮できたですよね」と反省を口にする小崎選手だが、森岡監督は大阪国際女子完走後わずか3ヶ月のインターバルでのレースで、期待以上の走りを見せてくれたことにほっとした表情。いまここで完全に力を出し切るよりも、今年11月から始まる、2011年世界陸上大邱大会代表の座を争うレースへ向けて、良い流れに乗れたことに安心したということだろう。それに「世界」と闘うには何が不足しているのか、何をすればいいのかはっきりと掴めたレースになったはずだ。