ゴルフ場への反対運動
お金の問題と、もうひとつゴルフの印象を悪くしているのが、自然環境の破壊という問題です。本書でも、こちらについての著述に主眼が置かれています。ゴルフ場の自然破壊という認識は、現在も多くの人々が持っていると思います。しかし、『ゴルフ場は自然がいっぱい』では、そもそもゴルフ場が環境破壊と断じる根拠の薄さを指摘しています。
ゴルフ場反対運動の原点は奈良県山添村で、浜田耕作さんが80年代後半に始めた、“農薬まみれのゴルフ場建設反対”運動だとしています。山添村は、三重県名張市と県境を挟んで接し、名張は現在も再審請求中で、謎の多い「毒ぶどう酒事件」のあったところです。浜田さんは、不幸にも奥様が事件に遭遇され、幸い命は取り留めたものの、農薬への強烈な拒否反応を持つようになったといいます。
ゴルフ場反対運動の象徴となったのが、ゴルフ場の排水溝から流れ出る赤いヘドロの写真や映像。しかし、著者の田中淳夫氏の取材によると、赤いヘドロの写真は反対運動にシンパシーを感じる雑誌記者のミスリードによるものだとしています。現実には、赤いヘドロは、土壌中の鉄分にバクテリアが繁殖したもので、農薬とはなんの関係のないもの。ゴルフ場建設前から、発生することはあったとか。
しかし、山添村はゴルフ場反対運動のメッカになっていきました。ゴルフ場建設計画のある地域から、村への視察が相次ぎ、赤いヘドロの写真は、ゴルフ場の環境破壊の象徴として使われました。
本書では、「当時の山添村のゴルフ場反対運動が間違っていたとは思わない。(中略)あまりに野放図なゴルフ場建設にストップをかけた意味は大きい」としています。
著者の田中氏によれば、山添村のゴルフ場は、既に奈良県の指針を越える面積になっていて、小さな村には、「ゴルフ場はいらない」という意志がはっきりとしていたといいます。
ゴルフ場建設に歯止めをかけるとしたら、こうした地域住民の意思やゴルファーのニーズによって行われるべきでしょう。
しかし、少なくとも根拠のない、誹謗と言えるような批判は退けられるべきです。
『ゴルフ場は自然がいっぱい』では、ゴルフ場批判本で、きちんとした論拠を示している本はほとんどなく、「読んでみると批判になっていないものがあまりに多いのだ。こんなレベルの批判だったのか」と、著者の田中氏は、その内容の貧弱さに驚き落胆したとしています。
扇情的で、論拠のないゴルフ批判は、今も頻繁に見られます。あえて言えば、“金持ちのスポーツ”としてのゴルフへの反感が、自然破壊という錦の御旗をもって、ある種の腹いせをしているのではないかと。ガイドもゴルフに携わる人間として、とても違和感を覚えます。
次回は、ゴルフ場の自然破壊について、データをあげながら反論する記述を紹介します。
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