ミステリー小説/ミステリー小説関連情報

新堂作品の二つの顔

"黒"と"白"の作風を持つ人気作家・新堂冬樹。その作品世界に迫ります。

執筆者:福井 健太

新堂冬樹のユニークな来歴

『血塗られた神話』
"悪魔"と称される街金融の若き経営者・野田秋人――その関係者たちが次々に惨殺されていく。闇の世界を描く第7回メフィスト賞受賞作。
推理作家には奇抜な経歴の持ち主が少なくないが、新堂冬樹はその代表格にほかならない。1966年に大阪で生まれた新堂は、闇金融の現場で働いた後、1998年に『血塗られた神話』で第7回メフィスト賞を受賞して作家デビュー。金融コンサルタント業を営みつつ、闇社会を題材にした犯罪小説で人気を博し、2007年には芸能プロダクション"新堂プロ"を設立した。新人作家のプロデュースを手掛けるなど、旧来の"いわゆる小説家"の枠に収まらない活動を通じて、独自の地位を確立しつつある――という極めてユニークな人物なのだ。数年前に〈世界最強虫王〉というDVDシリーズがヒットしたが、その制作会社の社長を務めていたのも新堂なのである。

新堂作品の"黒"と"白"

『黒い太陽』
多額の借金を抱えた青年・立花篤は、金のために"黒服"の世界に身を投じた。夜の住人たちが跋扈する著者の代表作。
異色のユーモアを操る犯罪作家としてデビューした新堂は、2006年にテレビドラマ化された『黒い太陽』をはじめとして、多くのダークな作品群を発表している――が、彼の作風はそれだけではない。2003年刊の『忘れ雪』で少年と少女の純愛を扱って以来、静謐な恋愛小説でも読者を魅了し続けているのだ。前者(黒新堂)と後者(白新堂)はあまりにも傾向が異なるが、いずれも新堂の"持ち球"であることに変わりはない。マルチな才能はマルチな作風の使い手でもあったということだろう。

次のページでは『君が悪い』を御紹介します。
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