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10人のオールスター競演

警察小説〈87分署〉シリーズで知られるエド・マクベイン。彼の編んだアンソロジー『十の罪業』には超一流のメンバーが集結しています。

執筆者:福井 健太

エド・マクベインと警察小説

『警官嫌い』
刑事たちが次々に殺された。アイソラ警察は犯人に辿り着けるのか? 〈87分署〉シリーズの記念すべき開幕編。
マイ・シューヴァル&ペール・ヴァールー、ヒラリー・ウォー、R・D・ウィングフィールドなど、警察小説の名手は少なくない――が、世界で最も有名な警察小説が〈87分署〉シリーズであることは確かだろう。1956年に書かれた『警官嫌い』に始まり、2004年刊の『最後の旋律』までに全54冊が書かれた同シリーズは、架空の街アイソラの刑事たちが活躍する"警察小説の元祖"にほかならない。刑事たちのリアルな捜査を描く警察小説(および刑事ドラマ)のスタイルはここで誕生したのだ。

そんな〈87分署〉シリーズの著者エド・マクベインは、1926年に(アイソラのモデルでもある)ニューヨークで生まれた。海軍勤務を経て専門学校で創作を学び、出版エージェントの社員として活動した後、1953年に作家として独立。翌年にエヴァン・ハンター名義で発表した『暴力教室』は最初のヒット作となった。代表作〈87分署〉シリーズや〈ホープ弁護士〉シリーズのほか、エヴァン・ハンター名義のサスペンス、カート・キャノン名義の私立探偵小説なども手掛けており、1986年にアメリカ探偵作家クラブのグランドマスター、1998年に英国推理作家協会のダイヤモンドダガーを獲得した巨匠である。ちなみにマクベインはアルフレッド・ヒッチコック『鳥』の脚本家でもあり(ハンター名義)、黒澤明『天国と地獄』は〈87分署〉シリーズの『キングの身代金』を映像化したもの。日本の映画好きとも縁の深い人物と言えるだろう。

次のページでは『十の罪業 RED』『十の罪業 BLACK』を御紹介します。
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