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カレル・チャペック入門(2ページ目)

チェコスロバキアの生んだ国民的作家カレル・チャペック。その多彩な作品群に迫ります。

執筆者:福井 健太

日常エッセイと短編集

『園芸家12カ月』
園芸をこよなく愛したチャペックが、四季の変化を通じて"庭いじり"の愉悦をユーモラスに綴ったエッセイ。園芸好きには必読の名著である。
カレル・チャペックは社会の闇を捉えるだけではなく、日常的な幸福を文章化する才能にも秀でていた。『園芸家12カ月』には庭造りの醍醐味が凝縮されており、ここに著者の趣味が反映されていることは明らかだ。『チャペックの犬と猫のお話』では愛犬や愛猫たちの生活がユーモラスに描かれているが――飼い主とペットの視点を自在に切り替え、それぞれの見解を軽妙に述べていく文章からも――これが世界最高のペットエッセイの1つであることは疑いない。この優しい眼差しがあるからこそ、チャペックは文明批評家としての鋭さを同時に持ち得たのである。

そして――チャペックは(当然)短編の名手でもある。『ひとつのポケットから出た話』『ポケットから出てきたミステリー』『こまった人たち』などに加えて、立て続けに2冊の短編集が上梓されたのは、日本にも愛読者が多いことの証拠に違いない。『カレル・チャペック短編集』にはウィットに富んだ16編が収められている。新妻殺しやサボテン窃盗事件などの犯罪譚も含まれてはいるが、神話や伝承をモチーフにした小品も多く、基本的にはユニークな発想に基づく"場面"を集めた1冊と言えるだろう。煙に巻かれたような読後感を覚えるかもしれないが、その浮遊感こそが著者の持ち味なのだ。『カレル・チャペック短編集II 赤ちゃん盗難事件』には14編が収録されており、とぼけた雰囲気のユーモアミステリーがその半数を占めている。必ずしも凝った物語ではないけれど、軽妙さと深淵さを備えた"語り"は著者の大きな魅力。巨匠の傑作群を手軽に楽しめる好著なのである。

【関連サイト】
青空文庫…青空文庫のカレル・チャペックのページ。『R.U.R.』のテキストが置かれています。
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