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東野圭吾『流星の絆』がついに単行本化!(2ページ目)

東野ファン待望の最新長編『流星の絆』は、両親を殺された三兄妹の復讐物語。名手ならではのストーリーテリングに注目です。

執筆者:福井 健太

三兄妹の復讐計画をシニカルに描く
著者会心の最新作

『流星の絆』
両親を殺されて詐欺師に成長した3人兄妹は、殺人犯を陥れるために証拠を捏造していく。秀逸なドラマ性と意外な結末を備えた快作。
東野圭吾の最新作『流星の絆』は、約1年間にわたって『週刊現代』(2006年9月16日号~2007年9月15日号)に連載された。昨年11月刊の『ダイイング・アイ』以来、約4か月ぶりの新刊にあたる。洋食店「アリアケ」の子供たち――有明功一、泰輔、静奈の3人は、ペルセウス座流星群を見るために深夜に家を抜け出した。彼らがこっそりと帰宅すると、両親は部屋で刺し殺されていた。怪しい人影を目撃した泰輔は警察に人相を告げるが、捜査は一向に進まず、やがて事件は忘れ去られてしまう。そして14年後――3人は詐欺師として生計を立てるようになっていた。彼らは"最後の仕事"として、吉祥寺のレストラン店長・戸神行成に偽のダイヤモンドを売りつけようと画策するが、その父親・戸神政行を目撃した泰輔は「父さんと母さんが殺された夜、家の裏口から出ていった男……今の男が、あの時の男だ」と告げるのだった……。

戸神政行が「アリアケ」の味を盗んだ――そんな疑惑を抱いた功一たちは、政行が殺人犯である証拠を探すことにした。やがて疑惑は確信に変わり、彼らは証拠を捏造して警察を誘導しようとする。いっぽう静奈は情報を得るために行成との接触を続け、その誠実さに心を奪われてしまう。彼らの思惑は何処へ辿り着くのだろうか?

警察の視点、それを誘導する者の視点、両者の狭間に置かれた"第三者"の視点――彼らの立場と感情を並行して描き、警察小説と倒叙ミステリーを両立させるのは著者の得意技にほかならない。殺人犯が密告者を推理する『鳥人計画』、誘拐犯が"真の黒幕"に踊らされる『ゲームの名は誘拐』などにもその手法は見られるが、本書にはさらにトリッキーな趣向が盛り込まれている。三兄妹の間で繰り広げられるドラマ、捜査を攪乱される警察、14年前の意外な真相などを織り込んだテクニカルな逸品にして、今年度の国産ミステリー界を代表しうる傑作なのである。

【関連サイト】
講談社BOOK倶楽部:流星の絆…講談社公式サイトの『流星の絆』紹介ページ。他の東野作品も紹介されています。
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