ベストセラー作家・東野圭吾の出来るまで

『放課後』
女子高の教師が密室状態の更衣室で殺された。容疑者が次々に浮上し、体育祭のさなかに第2の殺人が発生する。教師の「私」が突き止めた意外な動機とは?
東野圭吾は1958年大阪市生まれ。読書とは無縁な学生だったが、高校2年生の時に第19回江戸川乱歩賞受賞作・小峰元『アルキメデスは手を汚さない』の面白さに衝撃を受け、松本清張などの推理小説を熱心に読むようになったという。大阪府立大学工学部を卒業後、日本電装株式会社(現デンソー)に技術者として入社し、1984年に『魔球』が第30回江戸川乱歩賞の最終候補に選ばれる。翌年に『放課後』で第31回江戸川乱歩賞を受賞し、1986年に専業作家としての活動を開始した。1998年に『秘密』がベストセラーを記録し、翌年には同作で第52回日本推理作家協会賞(長編部門)を獲得。2006年には『容疑者Χの献身』で第134回直木三十五賞と第6回本格ミステリ大賞(小説部門)を受賞。日本推理作家協会賞、直木三十五賞はともに6度目のノミネートだった。

東野圭吾の作風は多岐に渡っているが、デビュー直後は青春ミステリーの名手と称されることが多かった。1980年代の著者は『放課後』『卒業』『学生街の殺人』などの青春ミステリーに足場を置きつつ――さらに作風の幅を広げるべく――ユーモアミステリーや実験的な本格ミステリーを生み出していた。1990年代には本格ミステリーやサスペンス小説のほか、SF色の強い作品にも挑戦しており、1996年の『名探偵の掟』は作中の名探偵が本格ミステリーの"お約束"を揶揄するという構成で話題を呼んだ。同年に上梓された『どちらかが彼女を殺した』は最後まで犯人を明かさない(読者に推理させる)という問題作。1998年の『秘密』で一躍ベストセラー作家の仲間入りを果たし、翌年には『白夜行』も大ヒットを記録。『容疑者Χの献身』は2006年度版「このミステリーがすごい!」の第1位にも選ばれている。

21世紀の東野圭吾

『さまよう刃』
若者グループに殺された娘の復讐のため、父親は犯人の1人を殺して逃走した。"追う者"と"追われる者"を描く迫真のサスペンス。
圧倒的な技量と開拓精神を持ち、多くの実験作を世に問うてきた東野圭吾だが、近年は多くの読者を対象とした――マニア向けではない――人間の内面を掘り下げるサスペンスが創作の中心になっている。たとえば『さまよう刃』では娘を殺された父親の復讐劇、『使命と魂のリミット』では心臓外科医を目指す女性の秘密、『夜明けの街で』では不倫に悩むサラリーマンのドラマを扱うという具合。そんな著者の最新刊『流星の絆』は両親を殺された三兄妹の復讐譚である。

次のページでは『流星の絆』を御紹介します。