ミステリー小説/ミステリー小説関連情報

重鎮・島田荘司のベストセレクション

現代本格ミステリーの"神"こと島田荘司のベスト10を精選した短編集が登場。その豪華な内容に迫ります。

執筆者:福井 健太

現代本格ミステリーの"神"

日本の本格ミステリーファンにとって、島田荘司ほど強烈な存在感を放っている作家は他にいないだろう。1948年に広島県で生まれた島田は、武蔵野美術大学を卒業後――ダンプカーの運転手やイラストレーターなどを経て――第26回江戸川乱歩賞の最終候補作『占星術のマジック』を改稿した『占星術殺人事件』で1981年に小説家デビュー。名探偵・御手洗潔(初刊時は「清志」)の初登場する本書と第2作『斜め屋敷の犯罪』で本格ミステリーマニアの度肝を抜いた後、1984年刊の『寝台特急「はやぶさ」1/60秒の壁』で警視庁捜査一課刑事・吉敷竹史のシリーズを開始し、たちまちベストセラー作家の仲間入りを果たした。この時期には『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』『夏、19歳の肖像』が直木賞の候補に選ばれている。1980年代後半からは"新本格"作家を続々とデビューさせ、本格ミステリー論とその実践を世に問うことで、島田は本格ミステリー界の第一人者となった。日本人論や死刑問題に関する著書、カーエッセイなども数多く上梓しているが、そんな多才ぶりも多くのファンを獲得している理由の1つに違いない。

著者と読者の選んだ豪華BOX

『Shimada Soji very BEST 10』
全ての中短編から10作を厳選した超豪華企画。もちろんクオリティの高さは折り紙付き。ファンにとってはマストアイテムだろう。
島田の業績を列挙するときりがないので、ここでは最新刊『Shimada Soji very BEST 10』の紹介に絞って話を進めよう。講談社BOXから刊行された本書は、デビューから現在までの四半世紀に書かれた中短編(全66編)から10作を厳選したベストアルバム。銀色のケースに2冊のペーパーバック――『Reader's Selection』と『Author's Selection』を収めた仕様になっており、前者には読者投票で選ばれた5編、後者には著者の選んだ5編が掲載されている。全作品に著者のコメントが付されているのも嬉しいところだ。

次のページでは『Shimada Soji very BEST 10』の収録作をチェックします。
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