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走るように読む『SPEEDBOY!』(2ページ目)

銀色の箱入り本で話題の新レーベル講談社BOXのなかから、『SPEEDBOY!』をピックアップ。少年が韋駄天のように走る走る走る。運動音痴なガイドも走る爽快感と怖いような高揚感を味わいました。

執筆者:石井 千湖

限界を突破する気持ちよさ「壁と枷」

山ん中の獅見朋成雄
成雄が異界を駆け抜ける前作も傑作!
背中にもうもうと生えている毛のせいで人間かどうかすら疑われる成雄。生えるべきところに生える毛のことですら悩む思春期にあって、かなりキツい境遇です。しかしそのキツさよりも強烈に印象に残るのは、彼が疾走するシーン。

「壁と枷」は、競技会のランナーとして活躍していた成雄が自らの走りに限界(=壁)をもたらす要因に気づく話です。コーチ、並走者、観客……余計だと思うもの(=枷)を切り捨てていくごとに、速度はぐんぐんあがっていく。読み手は、枷をはずす過程に自分の意識を重ね合わせる。すべての枷を取り払った成雄が、ついに水の上を走りだしたときの爽快感は格別!

この「壁と枷」に登場する白い玉は徐々に大きくなりながら、7話のうち奇数番号のエピソードにバトンリレーのように受け継がれていきます。一方、偶数番号の話では成雄の家の庭に石が積み上げられる。この玉と石をどういうふうに解釈するかは人それぞれ。いろいろ想像することがこの作品を読む楽しみではないでしょうか。ちなみにガイドは、玉はエネルギーや希望、石は内面に潜む破壊的な衝動かなあと考えているのですが。10代の男の子の繊細さ、危うさ。それをストレートに描くことに対する含羞があらわれているラスト一文まで、走り抜けるように読める一冊です。

<関連サイト>
講談社BOOK倶楽部…講談社公式サイト内にある特設ページ。2007年1月からはなんと西尾維新&清涼院流水の大河ノベルがはじまるそう。
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