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走るように読む『SPEEDBOY!』

銀色の箱入り本で話題の新レーベル講談社BOXのなかから、『SPEEDBOY!』をピックアップ。少年が韋駄天のように走る走る走る。運動音痴なガイドも走る爽快感と怖いような高揚感を味わいました。

執筆者:石井 千湖


話題の新レーベル、講談社BOX。もうお読みになりましたか? 創刊ラインナップ4点のなかから、『SPEEDBOY!』をピックアップ。少年が韋駄天のように走る走る走る。運動音痴なガイドも走る爽快感と怖いような高揚感を味わいました。

走るように読む舞城王太郎『SPEEDBOY!』

SPEEDBOY!
漫画も描く、映画の企画も立てる多才な著者。創作にも限界なし?
デビュー作の『煙か土か食い物』では手術シーンをリズミカルに。三島由紀夫賞を受賞した『阿修羅ガール』では女子高生のモノローグを生き生きと。舞城王太郎の作品はいつも冒頭でぐっと引き込まれる。最新刊『SPEEDBOY!』も例外ではありません。本書の第一話「壁と枷」は、こんな文章ではじまります。

線の上を走り続けるのは難しいが空中に並んだ点に順番に体当たりするのはたやすい。走るとき、僕の意識は足にはなくて胸にある。走る先に浮かんで並ぶソフトボール大の白いほんわかした玉を僕はみぞおちのちょっと上くらいに当てていく。

読点のない文の間に挟むことにより、点で区切られた“走るとき”という言葉が際立つ。しかも“白い玉”というモチーフによって鮮やかにヴィジュアルが思い浮かび、走るときの身体感覚を共有しやすくなっています。成雄と一緒に走っているような気持ちになれるんですね。

本書は七つのエピソードから成る中編小説です。主人公は、鬣(たてがみ)のような毛が生えている少年・成雄。名前といい、鬣があることといい、足が速いことといい、3年前に出版された『山ん中の獅見朋成雄』と同じ。続編としても読めますが、内容的には独立した作品です。

成雄と一緒に走る!「壁と枷」の爽快感とは?>>>
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