生きている世界遺産「アンコール」
水牛を追う子どもたち。多くの寺院は現地の人々に開放されており、寺として、生活空間として利用されている
遺跡付近の人々。クメールの子孫たち。満面の笑みで応えてくれる
たとえば、牛追いの少年が水牛の背に乗ってアンコールワットの堀を渡る姿を見かけることもあるだろうし、いまだ眠り続ける地雷の被害にあって足や腕をなくした人々を目にしたりもするだろう。また、バンテアイ・スレイやトレンサップ湖付近の遺跡を訪ねれば、近くに高床式の美しい家並みを見ることもできる。そこに住む子供たちが遺跡で遊んだり、自分で作った髪飾りなんかを売っていたりする。彼らにとって遺跡は通路であり、神社であり、遊び場であり、また仕事場でもある。
村の子どもたち
村の人々はお金持ちではない。なかには旅行者をだまそうとしたり、寄付を要求する人もいる。でも、彼らに切実さがないのはなぜだろう? 悲痛な顔で寄付を要求しておきながら、翌日には満面の笑みをたたえて手を振ったりしてくれる。あの笑みに、ひとつの文化を感じることができるはずだ。
バイヨン寺院の四面塔の観世音菩薩の微笑みは「クメールの微笑み」と呼ばれている。クメールの微笑みはまだいたるところに生きている。