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インナーゲーム オブ ジャズ Part1(2ページ目)

30年前に一大センセーションを巻き起こし、今また「コーチングブーム」の中で再評価が始まっている「インナーゲーム」理論。話題の理論をジャズ演奏に活用!

執筆者:鳥居 直介

自由な演奏を妨げているのは誰か?

あなたはステージに立っている。一か月振りのセッションだ。先月失敗した「all the things you are」のアドリブをこの一か月、必死に練習してきた。今日はリベンジマッチだ。

店に入ったあなたは周囲を見渡す。先月も共演した顔ぶれもちらほら見える。あなたは考える。「できればあの緑Tシャツがドラムのときに弾きたいな。あのメガネのトランペットが一緒になるのは勘弁してほしい。ピッチが悪いからこっちの演奏まで悪く聞こえてしまう」

残念ながら、あなた目当てのドラムとも一緒になれないし、一緒にテーマを演奏するのは避けたかったトランペットだ。あなたはカウントを出す。1,2,3。「ああ、やっぱりだ。いきなりピッチを外しやがって。リズムもぐだぐだじゃないか・・・」

あなたのソロになる。あなたは「ここは一番、かっこいいところを見せよう」と考える。16小節目からサビにかけては、しっかりとフレーズを仕込んできた。その山場に向けて、どのフレーズをつないでいこうか考える・・・が、9小節目でミストーンが出てしまい、リズムがもたる。そのリズムにドラムが釣られる。連鎖反応でバンド全体のサウンドが盛り下がる。

サウンドが盛り下がった中では、せっかくの仕込みフレーズも生きてこない。一瞬迷ったが、せっかくなので、盛り上げに使えそうだと思った仕込みフレーズを披露する。しかし、リズムがぐずっているなかでは、誰もそんなものには耳を貸さない。

演奏を終え、ステージから客席に戻ったあなたは歯噛みする。「ああ、最悪だ。せっかく練習してきたのに、ダメな共演者のせいで、ひどい目にあった」と他人を責める。しかしその後すぐに、あなたは謙虚にも、自分について反省しはじめる。「いや、他人を責めてもしょうがない。自分の音が、リズムが、もっとしっかり出ていれば、そもそも彼らのリズムもぐずらなかったかもしれない」

時間とともに、他責は自責に移り変わっていくだろう。いや、謙虚な日本人の多くは、ステージに立っている最中から、自責モードに入っているかもしれない。このエピソードで紹介した彼も、本人の自覚はないかもしれないが、小さなミスの度に、反省に反省を重ねていたかもしれない。

さていま、「自責」と書いたが、はたして「誰が誰を責めている」のだろうか? 実は、このように問い返すことから、インナーゲーム的ジャズ演奏の扉が開かれる。

次ページでは、インナーゲームの核心「セルフ1」と「セルフ2」について解説する


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