あなたの趣味志向に合わせておすすめジャズCDをご紹介する、タイプ別「はじめてのジャズCD」。第3回では、ロックファンにお勧めのジャズCDを紹介しました。

さて、今回のテーマはブルース。ジャズ、ひいてはすべての黒人音楽のルーツとも言われるブルースですが、現在では非常にマイナーなジャンルといえます。しかし、「ブルースなくしてジャズもなし」というのも、動かせない事実。ジャズにとって欠くべからず要素であるブルースについて理解することによって、今よりもずっとジャズが楽しくなってくると思います。

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ジャズに息づく「ブルース」

Strange Fruits
Billie Holiday『奇妙な果実』
売春で投獄、麻薬所持で逮捕。破天荒な生き様の一方で、天性の音色をもったすばらしい声と、幼い頃からの音楽キャリアによって培われた音楽性によって、歴代のジャズヴォーカリストの中でもトップクラスの人気を誇るビリー・ホリデイ。本作は彼女が1939~44年に残した名唱から構成されている。タイトル曲「奇妙な果実」はあまりにも有名。
■ビリー・ホリデイ『奇妙な果実』
さて、一口に「ブルース」といっても、さまざまな意味合いがあります。詳細な用語解説は別稿(用語解説「ブルースってなに?」)に譲ることとして、ひとまず音源を聴いてみましょう。

初めにご紹介するのはビリー・ホリデイの『奇妙な果実』。原題のstrange fruitsが意味するのは何か、皆さん想像がつくでしょうか? (The Unofficial BILLIE HOLIDAY Websiteで原詩を見ることができます)

冒頭部分を少し私が訳してみましょう。

南部の木々には奇妙な果実がなっている
葉や根には、血がしたたりおちている
黒いからだが南風に揺れている
奇妙な果実がポプラの木々に吊されている

(Lewis Allen作の詞「Strange Fruits」冒頭部分。訳は筆者)

だいたい想像がついたでしょうか。そう、「奇妙な果実」とは、リンチに遭い、木に吊された黒人の死体のことなのです。実際、20世紀の前半まで、アメリカ南部諸州における黒人へのリンチは横行していました。あのマイルス・デイヴィスも、黒人へのリンチ事件に対して「胸が悪くなった」と自叙伝に書き残しています。

ビリーは、この歌詞をみて「ぜひ自分で歌いたい」と申し出たと伝えられています。「strange fruit」は、楽曲の構成上ではブルースではありません。しかし、ビリーの歌い回し、節回し、そしてそこに込められた感情は、やるせない悲哀そのもの、ブルースそのものだったと言えるでしょう。

ジャズの場合、楽理的な話をするなら、ほとんどの演奏にブルースの影響を見ることができます。ブルーノートの多用やシャッフルのリズムなどを使わずに「ジャズ」を演奏することは不可能です。しかし、ジャズファンが演奏や歌を「こいつの歌はブルースだ」とか、「あいつの演奏にはブルースがない」という言い方で評する時、ブルースという言葉はかなり文化的、精神的な「在り方」を表現する言葉になっています。

用語解説「ブルースってなに?」でも論じましたが、ブルースの真骨頂は、「悲哀を明るく歌い上げること」と、「個人主義、自己表現」にあります。そして後者は、ジャズ、ブルースにおける黒人達の個性的なファッションや言動、そして音楽表現に強く表われることになるのです。

ここでは、そうした「ブルース精神」に溢れたジャズミュージシャンの作品をご紹介していくことにいたしましょう。

次ページでは、個性的で力強いブルース満載のジャズCDを一挙紹介!