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(6)「リー・モーガン vol.3」(2ページ目)

芋づる式CDレビュー「ジャズ名盤千夜一夜」。第6回はリー・モーガン「リー・モーガン vol.3」。希代の名曲「クリフォードの思い出」以外の楽曲にも意外な伝説が?

執筆者:鳥居 直介

ベニー・ゴルソン~ローランド・カークの系譜

以前、はじめてのジャズCD vol.5 奇人・変人好きのための入門盤において、変わったサックスプレイヤーを紹介したことがある。ローランド・カーク。三本のサックスを加えて、果てしない循環呼吸で吹きまくる盲目の怪人である。

このローランド・カーク、ある年代からラサーン・ローランド・カークと名乗っている。この「ラサーン」、アルファベット表記をするとRahsaanである。ラサーンという名前はキリスト教圏でもなければ、イスラム圏(※黒人ミュージシャンはしばしばナショナルアイデンティティをイスラムに求め、改姓した)でもあまり見当たらない。Rahsaanに近いものといえば、hasaanであろうか? 「ハッサン」。これなら、イスラム圏では当たり前の名前であり、それにローランドのRをつけたアナグラムだと考えれば、わからなくもない。

『ラサーン、ラサーン』(70年)というアルバムリリース時のクレジットで、カークははじめてラサーンを名乗っている。カークはこのアルバムでは「ラサーンという名前は、私の宗教:夢とスピリッツを現わしている」と語っている。

ラサーンの夢。

そう、今回紹介した『リー・モーガンvol.3』の1曲目の収録曲「ハサーンズ・ドリーム」そのままではないか?

では、「ハサーンズ・ドリーム」について、作者のベニー・ゴルソンはどのように語っているのか? ゴルソンはアルフレッド・ライオンの求めに応じて、楽曲についてこのように説明しているという。

「<ハサーンズ・ドリーム>は、アラビアの架空の少年がスルタンの宮殿で素晴らしいものをたくさん見て、家に帰ってきた夜にその夢をみるというものだ」

カークが大先輩であるゴルソンの楽曲を好んで研究していたことには種々の傍証がある。もちろん、名前と夢の符号だけをもって、それ以上の何かを言うというのは妄想に過ぎないわけだけれど、こういう妄想こそが、ジャズを聴くときは楽しかったりもするのだ。


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