ジャズを聴く楽しみの1つは、1枚の名盤が芋づる式にたくさんの名盤につながっていくこと。ミュージシャン同士の仲間関係、師弟関係はもちろん、レーベルや地域が与えた影響、さらにはまったく無関係な2作品の間に確かに存在する共通性など。「ジャズ名盤千夜一夜」では、毎回1枚の「名盤」を紹介。次々に関係性の糸をたどりながら、全1000回(!)をめざします。

「歴史的名演」に隠れた名演『リー・モーガン Vol.3』

■リー・モーガン『リー・モーガン Vol.3』
リー・モーガン『リー・モーガン Vol.3』
リー・モーガン『リー・モーガン Vol.3』
1957年。リー・モーガン(tp)、ジジ・クライス(as)、ベニー・ゴルソン(ts)、ウィントン・ケリー(p)、ポール・チェンバース(b)、チャーリー・パーシップ(ds)。3曲目の「クリフォードの思い出」(I Remember Clifford)が歴史的名演として賞賛される本作だが、その他の演奏もすばらしい出来。リー・モーガン初期の名作にして、モダンジャズを代表する傑作といえるだろう。
1. ハサーンズ・ドリーム
2. ドミンゴ
3. クリフォードの想い出
4. メサビ・チャント
5. ティップ・トーイング
6. ティップ・トーイング(別テイク)
前回の(カーティス・フラー『ブルースエット』で多くの楽曲を提供していたサックスプレイヤーにして希代のソングメーカーであったベニー・ゴルソン。彼の作曲家としての業績を語るときに無視できない存在なのが今回紹介するリー・モーガン『リー・モーガン Vol.3』3曲目に収録された「クリフォードの思い出」(I Remember Clifford)である。

天才トランペット奏者として期待されながら、1956年、夭逝したクリフォード・ブラウンに寄せたこの楽曲の評価を不動にしたのがこの演奏だといわれている。いわゆるジャズ「名盤中の名盤」の典型例であり、「このジャズを聴け!」的な企画では必ず取り上げられる1枚である。すでに紹介されつくした感もあるのだが、やはり改めて聴くとなかなか味わい深い作品なのだ。

リーダーであるリー・モーガンはこのとき19歳。このときすでにプレイヤーとしては完成といってもいいレベルに到達していたリーはこの後、アートブレイキー&ジャズメッセンジャーズでの活躍や、「サイドワインダー」など、ポップな楽曲でジャズの枠組を越えたセールスを記録するなど、幅広い活躍を見せたが、72年、愛人に拳銃で撃ち殺されるという壮絶な最期を遂げた。

若さあふれるリー・モーガンのアドリヴはパワフルですばらしいが、ジジ・クライスの堅実なプレイ、ベニー・ゴルソンの構成力あふれるアドリヴと聞き比べることでよりその深みが増すだろう。
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