ジャズを聴く楽しみの1つは、1枚の名盤が芋づる式にたくさんの名盤につながっていくこと。ミュージシャン同士の仲間関係、師弟関係はもちろん、レーベルや地域が与えた影響、さらにはまったく無関係な2作品の間に確かに存在する共通性など。「ジャズ名盤千夜一夜」では、毎回1枚の「名盤」を紹介。次々に関係性の糸をたどりながら、全1000回(!)をめざします。

新鮮なインスピレーションを与え続ける秀作『ブルースエット』

■カーティス・フラー『ブルースエット』
カーティス・フラー『ブルースエット』
カーティス・フラー『ブルースエット』
1959年発表。モダンジャズ、ハードバップ全盛期を象徴する名盤で、特に日本国内での人気が根強い。カーティス・フラー(tb)、べニー・ゴルソン(ts)、トミー・フラナガン(p)、ジミー・ギャリソン(b)、アル・ヘアウッド(ds)。
1. ファイブ・スポット・アフター・ダーク
2. アンディサイデッド
3. ブルースエット
4. マイナー・バンプ
5. ラヴ・ユア・スペル・イズ・エヴリホエア
6. 12インチ
前回とりあげた(ジョン・コルトレーン『BLUE TRAIN』で、サイドマンとしてハードバップサウンドを演出したトロンボーンプレイヤー、カーティス・フラーの代表作が、今回紹介する「ブルースエット」である。

いわゆるジャズ「名盤中の名盤」の典型例であり、「このジャズを聴け!」的な企画では必ず取り上げられる1枚である。すでに紹介されつくした感もあり、ガイドもあまり新鮮味のあることを書けるわけではないのだが、今でもときどきかけると新鮮さを感じる一枚でもあるので、ぜひともご紹介したいと思った次第だ。

タイトルチューンである「ブルースエット(Blues-ette)」がその典型だが、本作の大きな特徴は、複雑かつ繊細で美しいハーモニーである。ベニー・ゴルソンのテナーとフラーのトロンボーンがテーマを美しく織り上げている。

録音は1959年。日本ではテレビ朝日、フジテレビなどのキー局のテレビ放送が始まった年である。ジャズの歴史的にはハードバップ全盛期であるが、この年最大の出来事といえば、やはりマイルス・ディヴィス『カインド・オブ・ブルー』の録音であろう。60年代のモード奏法の流行、コルトレーンの隆盛、フリージャズへの展開といった激動の時代の幕開けであったわけだが、それは後世に振り返った私たちが抱く感想であり、当時の業界的には、むしろこの「ブルースエット」の世界、つまりは高度にアレンジが行き届いたハードバップの時代であったと考えたほうが正確であると思う。

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