さて、今回のテーマは奇人・変人。アートの世界には、世の中の規範から逸脱した奇人・変人が多いものですが、ジャズの世界は他の芸術領域にも増して、個性的な面々が多いように思います。
「当たり前」と信じ込んでいた世界観を破壊し、認識の枠組みを広げてくれる「奇人・変人」たちとの出会いは、アートの愉悦の1つでしょう。今回はそんな出会いを存分に味わえる、ジャズCDをご紹介します。 ※amazon.co.jpにあるCDは、ジャケ写にリンクしています。
ジャズ史に「独り」たたずむ巨人
■セロニアス・モンク『thelonius』セロニアス・モンク『thelonius』 セロニアス・モンクをはじめて聴く人に勧めたい。54年作品。パーシー・ヒース、ゲイリー・マップ(b)、アート・ブレイキー、マックス・ローチ(ds)らのサポートによって、モンク・ミュージックの世界が余すことなく表されている。 |
今や、ジャズ史を語る上で外すことのできない名となったセロニアス・モンク。奇矯な言動やファッションが人を惑わし、深い精神の病を病んでいたモンクですが、何より「ユニーク」であったのは、ほかならぬその演奏でした。
独特のタイム感。休符の目立つ旋律。独自の和声。最初にご紹介する『thelonius』は、そうしたモンク・ミュージックが持つ特殊性が十分に含まれていながら、実に素直に楽しめてしまう、不思議な1作です。
モンクは、そうした独創性の強いアーティストの例に漏れず、世間的には不遇の音楽人生を歩みました。
ビ・バップの聖地であったライブハウス「ミントンズ」のハウスピアニストであったモンクは、そのキャリアの当初から、多くのミュージシャンから崇拝されていましたが、その高い音楽性が世界に知られることとなったのは、実に30代後半のことだったのです。
しかし、世間に知られていようと知られていまいとモンクの音楽的成長は、常に淡々と、マイペースだったようです。実際、この『thelonius』に収録されているものを含めて、モンクの楽曲のほとんどが40年代に作曲されたものだということです。
この独創性にしてこの完成度。このアルバムが、1000~2000枚売ることにも苦労して、当時所属していたレーベルのお荷物となっていたという話は、何度聞いても信じがたいことです。
次ページでは、全盛期を迎えたモンク・ミュージックの真髄を紹介!