ハードバップの特徴は、いかにも「ジャズ」なスウィングしたビート感

「ハードバップ」は、(程度の差はありますが)どれも「Moanin'」のようにイントロ→テーマ→ソロ→テーマ→エンディング、といった音楽構成上の「わかりやすさ」を持っており、洗練されたアンサンブル、メロディアスで詩的なアドリヴ、いかにも「ジャズ」という感じのスウィングしたビート感が特徴です。

居酒屋やドラマのバックで流れるジャズも、その多くはハードバップ。聴いた瞬間「あ、ジャズだ」と多くの人が感じる音楽スタイルです。

ハードバップの登場は1955~60年のニューヨーク。その後、60年代のフリージャズ台頭の波を受け、一度は衰退します。しかし90年代以降、ニューヨークでも日本でもハードバップが若手ミュージシャンの手によってよみがえりつつあります。この現象を懐古趣味で片づけてしまう人もいますが、スタイルが昔のものであっても、「今」演奏されている生きた音楽であることに変わりはない、と私は考えています。

むしろ、ハードバップが見直されるようになったのは、スタイルとしての完成度の高さに、多くのミュージシャンが魅力と可能性を感じているからではないでしょうか?

おすすめハードバップCD3選!

以下、新旧ミュージシャンの「ハードバップ」を紹介します。『Moanin'』を気に入ってくれたあなたならきっとどれもお気に召すはず!?

Walkin'
The Miles Davis All Stars『Walkin'』
印象的なジャケ写でしばしばジャズ喫茶の棚を飾る。1.Walkin'、2.Blue 'N' Boogieはじめ、捨て曲なしの名盤。
■The Miles Davis All Stars『Walkin'』
1950年代の代表的傑作であり、“帝王”マイルス・ディヴィスが3年にも及ぶスランプ(麻薬が原因)から復帰した直後の、「復活宣言」とも言える一作。各奏者のアドリヴを含めた演奏全体の充実度は圧巻で、特に表題曲「walkin'」のマイルス、J.J.ジョンソン、ラッキー・トンプソン、ホレス・シルヴァーらのソロは繰り返し多くのジャズメンによって引用されることとなった。

Blues-ette
Curtis Fuller『Blues-ette』
1.Five Spot After Darkは普通のブルースだが、聴かせる。3.Blues-Ette、4.Minor Vampはちょっと変わった曲相だがガイドお勧めのテイク
■Curtis Fuller『BLUES ette』
村上春樹氏の小説『アフターダーク』に登場した、トロンボーン吹きの青年があこがれていたのがこのカーティス・フラー。小説タイトルの由来となった1曲目「FIVE SPOT AFTER DARK」におけるフラーの演奏は感情豊かで泣かせます。個人的には4曲目「MINOR VAMP」がお勧め。「Moanin'」でも登場したベニー・ゴルソンが初っ端にカッコよすぎるソロを聞かせてくれます。

ニューヨーク・スケッチ・ブック
秋吉敏子『ニューヨーク・スケッチ・ブック』
ジャズ入門者には「9.私を野球につれてって」か。大リーグ中継で聴き慣れたメロディをジャズで。
■秋吉敏子『ニューヨーク・スケッチ・ブック』
せっかくなので、最近の作品からも1つ。渡辺貞夫、日野皓正らとともに、日本のジャズ黎明期から活躍を続ける女傑。2003年、30年間率いてきた「秋吉敏子ジャズ・オーケストラ」を解散した秋吉の、ビッグバンド解散後のピアノトリオ第一作である。1曲目には上で紹介した「FIVE SPOT AFTER DARK」が、実にみずみずしい新鮮さで演奏されている。聴き比べて見るのもおもしろいかも。いずれにしても、ビッグバンドしか聴いたことがなかった僕には「ああ、やっぱり秋吉さんって、ピアニストとしても凄い人だったんだ」と気づかせてくれたアルバムだった。

今回のガイド記事はいかがだったでしょうか? 次回は「クラシックファンのためのはじめてのジャズ」をお届けします。クラシックファンの皆さんは必見!


タイプ別「はじめてのジャズCD」インデックス
vol.1 これぞジャズ!
vol.2 クラシックファンための入門盤
vol.3 ロックファンのための入門盤


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