コール&レスポンス

「Moanin'」は非常に印象的なピアノフレーズではじまる32小節の曲ですが、前半の8小節はピアノとホーンセクション、それ以降はホーンセクション同士での「掛け合い」となっています。これは「コール&レスポンス」という手法で、教会音楽における牧師の呼びかけと信者の応答がその源流だと言われています(CDをお持ちでない方は、リンク先のListen Japanサイトの試聴でご確認ください)。

「Moanin'」のテーマで行われているコール&レスポンスは、アドリヴではなく、譜面どおりの演奏です。しかし、実際に演奏される際にはピアノの呼びかけの微妙な揺れや強弱にホーンセクションも反応しながら応答しているのです。そうした両者の関係が、演奏全体に緊張感と独特の「乗り」を産んでいるというわけです。

こうした手法は、「ハードバップ」にはしばしば登場します。また、ここまではっきりした形でなくても、ジャズ演奏全般において、こうした楽器間での「会話」は欠かせないものです。特にアドリヴ中は、ソロをとる楽器とリズム隊(ドラム、ベース、ピアノなど)とのかけあいや応答関係に注目して聴いてみるとおもしろいでしょう。

アドリヴの展開

ジャズ、といえば誰もが思い浮かべるのが「アドリヴ」でしょう。和訳すると「即興演奏」。ジャズになじみがない方にとっては「譜面もなくてどうして演奏できるの?」と不思議だったりします。

「Moanin'」では、最初の32小節のテーマが終わった後はメンバーが順番にアドリヴをとっています。最初はトランペットのリー・モーガン、その後テナー・サックスのベニー・ゴルソン、ピアノのボビー・ティモンズ、ベースのジミー・メリットのソロへと続きます。

聞き慣れないとわかりにくいかもしれませんが、この間、曲のコード(和音)進行は、テーマの32小節をずっと繰り返しています。「Moanin'」の場合、テーマと同じ32小節を「1コーラス」と呼ばれる1つのまとまりとなっており、それぞれの奏者が数コーラスずつアドリヴ演奏を行い、次の奏者にバトンタッチをしているのです。

つまり、100%自由に演奏しているのではなく、その曲の枠組みにそって「自由なアレンジ」を即興で行っている、ということですね。

リー・モーガン、ベニー・ゴルソン、ボビー・ティモンズのソロは、どれも非常にメロディアスで、難しいことを考えなくても楽しめます。また同じコード進行を使っていても、アドリヴは三者三様。彼らの表現の違いを楽しめれるようになれば、もう立派な「ジャズファン」です。

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