■CoreAudioのことをASIOと呼んでいるだけなのか?
さて、ここでちょっとよく分からないのがオーディオのプラットフォームであるCoreAudioとASIOの関係についてです。前述したとおり、OS XではCoreAudioというものがサポートされたわけですが、ASIOという表記もところどころで見かけ、共存しているようにも思えるのですが、ちょっと調べてみてもなかなか状況がよく分からないのです。
たとえば、SteinbergのCubase SXでのドライバ設定画面を見てみるとASIOと表記されており、CoreAudioという言葉はまったく見られません。オーディオインターフェイスメーカーのWebサイトのほうを見てみると、OS X対応しているメーカーのほとんどはCoreAudio対応と書かれている一方で、M-AudioはCoreAudioとともにASIO対応という記述があったりもします。
では、Cubase SXはASIO対応とされているオーディオインターフェイスしか使えないのかというとそうでもないのです。実際に使ってみると、CoreAudio対応とされているもののほぼすべてが利用できるようになっているのです。つまり、この状況から考えるとCoreAudio=ASIOとなっており、ASIOというのはSteinberg製品における表記上だけのもののようにも思えます。でも、本当にそうなのでしょうか?
使ってみてひとつ気になるのは、ASIOコントロールパネルのボタンを押しても、ドライバ設定画面は表示されません。また、多くの場合、ASIOダイレクトモニタリングのスイッチも無視されるようで、CoreAudioが完全にASIOとして利用できるわけでもないようなのです。
この辺が非常に気になったので、Steinberg Japanを通じて、ドイツのSteinbergにおいてASIO関連の開発をしているエンジニアに問い合わせてもらったところ、Mac OS X版のASIOのSDK自体リリースされていないとのこと。つまり、本来ASIOドライバというもの自体はないというわけです。しかし、M-Audioでは、ASIO対応と書いているため、M-Audio Japanにも聞いてみると、これはCubase SXリリース以前のNuendo用として対応させたとのこと。つまり、Jaguar登場以前のOSXにおいて、従来のASIOの流儀に乗っ取ってOS X上でドライバを開発したというわけです。しかし、これはCubase SXのものとは別物であって、Cubase SXではASIOとして認識されないということのようなのです。
一方で某国産メーカーのエンジニアと、CoreAudioとASIOの違いについて話をしていた際、そのエンジニアから返ってきたのは、
「実際CoreAudioもASIOもほぼ同じものだから、ASIO自体意味がほとんどなくなっているんじゃないですかね。ただし、ASIOにはVST System Linkに対応させるASIO Positionning Protocolという同期を取るための信号を送る機能があるけれど、CoreAudioにはそれがありません。だから、CoreAudioにASIO Positionning Protocolを搭載したものをASIOと呼ぶ可能性もあるのでは……」
というようなコメントです。本当にその通りなのでしょうか。現在、Steinbergにこの辺の状況確認を行っているところなので、詳細の回答が来たところでまた掲載したいと思います。
ただ、現状のCubase SXでの設定画面や断片的な情報をつなぎ合わせると、SteinbergがOS X用のASIOを出してくる可能性は高そうです。
仮にASIOが正式登場したとしても、それが本当に意味を持ってくるかどうかは各ハードウェアメーカー次第でしょう。各社がASIO対応のドライバを開発しなくては意味がないですからね。しかし、ただでさえ対応させるべきドライバのプラットフォームが多いなか、またその対象が増えるとなるとメーカーの負担が増えるわけであまり歓迎されることではないのかもしれません。今後どうなっていくのか気になるところです。
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