アマルフィ海岸と妖精たちの伝説

かつてはイタリア四大海洋都市としてピサ、ジェノヴァ、ヴェネツィアと覇を競い合ったアマルフィ。こちらが共和国の中心、アマルフィの街並み

かつてはイタリア四大海洋都市としてピサ、ジェノヴァ、ヴェネツィアと覇を競い合ったアマルフィ。こちらが共和国の中心、アマルフィの街並み

アマルフィ海岸には神々と妖精の物語がいくつも語り継がれている。

絶壁にたたずむ邸宅とアマルフィ海岸

絶壁にたたずむ邸宅とアマルフィ海岸

アマルフィの街にはこんな伝説が残っている。ギリシア神話に登場する英雄ヘラクレスは、愛する妖精と共に暮らしていた。しかし、幸福の最中、妖精は突然亡くなってしまう。ヘラクレスは深く嘆き悲しみ、その妖精の名を永遠のものとするために、世界でもっとも美しい場所に亡がらを埋め(あるいは、沈め)、街を切り拓いて彼女の名をつけた。こうして誕生したのがアマルフィの街なのだという。

一方、アマルフィの西にあるポジターノには、ギリシア神話の海の神ポセイドンが、愛する妖精パジテアにこの街を贈ったことからその名がついたという伝説が残っている。街にはポセイドンやパジテアの名を冠した通りやホテルがいくつもあり、伝説はいまも伝えられているようだ。

ポジターノ近くのガッリ諸島にはギリシア神話の怪物セイレーンが住みついていたといわれている。セイレーンとは、上半身が人間の女性、下半身が鳥の姿をした伝説上の生き物で、海の岩の上に座って美しい歌を歌い、船人たちを惑わして難破させ、海に引きずり込むのだという。実際にガッリ諸島の3つの島の周囲の海中には、多くの難破船が沈没しているらしい。

 

天国の地獄 アマルフィ海岸

円すい形をした山を取り囲むようにして家々が連なるポジターノの家並み。パステル・カラーの色使いがとてもかわいらしい

円すい形をした山を取り囲むようにして家々が連なるポジターノの家並み。パステル・カラーの色使いがとてもかわいらしい

アマルフィ海岸の美しい姿は「天国」にたとえられ、それゆえたくさんのギリシア神たちが自分の恋する妖精たちにこの景色を贈った。でも、街を歩いてみると、散策が意外とたいへんであることがわかる。

断崖を背にしたアマルフィの街並み。中央がドゥオーモの鐘楼

断崖を背にしたアマルフィの街並み。中央がドゥオーモの鐘楼

大聖堂や教会を中心とするキュートな街並みには、階段だらけの歩道が迷路のように張り巡らされている。ここをのんびり迷い歩くのが楽しいのだけれど、時々、荷物を山のように抱えた女性とすれ違ったりする。

ソレント半島は海と山が出会う場所。平野はほとんどないので、人々は断崖に張りつくように家を建てて暮らしている。当然毎日山の上り下りを強いられるわけで、誰がいったか「景色は天国、暮らしは地獄」。

19世紀以前は道路がなかったためにほとんど陸の孤島となっていて、他の街との連絡手段は船のみ。豊かな土壌も川もないうえに潮風が強いので、穀物を栽培することもできなかった。時に嵐が強烈な風と波と雨をもたらし、また強力な海洋国家や海賊が攻めてくることもあった。

人々はこんな場所でどのように繁栄を勝ち得たのだろう?