そしてもひとつ思い出すのが長塚作品の『ウイー・トーマス』。読売演劇賞受賞した話題作で、舞台はスプラッター状態。臓物がこれでもかと飛び出しましたっけ(それが妙に笑えるんだけど)。流れる夥しい血、そしてゴシック。歌舞伎で言えば時代物の復活狂言のクライマックスみたいな感じか?
いや、そこはそれ、長塚さんの芝居ですから、そうスルスルッと悲劇一本やりというのでもないでしょう。海老蔵さんのコメントにもあったように、0.1秒くらいの速度で感情の反応が求められるような側面があるとしたら!これは歌舞伎の舞台では絶対観られない海老蔵が楽しめるということ。
海老蔵さんが、『信長』や『パリオペラ座』の製作発表の時よりずーっと、リラックスして見えたのです(独断)。長塚さんというほぼ同世代の作家と組めるという、役者として歌舞伎とは全く異なるエキサイティングな舞台に取り組める喜びのようなものが、伝わってきましたね。
「ドラキュラ?」「ドラキュラ!」ってまるで忠臣蔵の「山」「川」ですか?っていうくらい、もうイキはばっちり合ってる感じが漂ってました。
かつて初代坂田藤十郎と組んだ近松門左衛門、三世尾上菊五郎と組んだ鶴屋南北や、五世尾上菊五郎と組んだ河竹黙阿弥、二世市川左團次と組んだ岡本綺堂など、役者と作者の素敵な出会いってのを目撃したような気がしてます。すごくしてます。
で、生の弦楽四重奏というから、なんだかもうそれだけで中世?な気分がしてくるじゃないですか。
これはね、来ますよ。くる。絶対!
面白い芝居になる予感が、すごく、します!
・・・見逃せませんっ。ごくっ。
『ドラクル』
2007年9/1~26
東急Bunkamuraシアター・コクーン
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