【宝塚用語徹底解説】“大休憩・小休憩”
【宝塚用語徹底解説】“大休憩・小休憩”
食事をしたり、化粧室へ行ったり、キャトルレーブでお買い物したり、ロビーの大きなモニターでスカイステージを見たり、おしゃべりをしたり……と、観客の皆さんにとってはくつろいだ幕間時間。
しかし出演者にとっては何かと慌しく、休憩どころではありません。
公演中の休憩時間を一般に、幕間(まくあい)と言いますが、宝塚歌劇団の生徒は、“大休憩”(だいきゅうけい)、“小休憩”(しょうきゅうけい)と呼びます。
“大休憩”と“小休憩”の違い、そしてその間、生徒たちは何をするの…?をお話しましょう。
“大休憩”とは?
二回公演の場合の、一回目と二回目の間の休憩。
なので、一回公演の日に大休憩はありません。
時間は、宝塚大劇場では1時間、東京宝塚劇場では1時間半か2時間です。
“小休憩”とは?
一回の公演の途中の休憩。
二本立てなら芝居とショーの間、一本立てなら一幕と二幕の間。
時間は約35分。
他、バウホール公演や特別公演は、出し物の時間によって違ってきます。
“大休憩”と“小休憩”に何をするのか……? それはおわかりの通り、舞台に出るための仕度。
そしてそれは、作品の内容によって違ってくるため、“大休憩”と“小休憩の慌しさも変わってきます。
宝塚の作品は、一本立てか二本立て。
その内容は大きく分けて“洋物”と“日本物”がありますよね。
【洋物と日本物――楽屋での大変度!!】でもお話しましたが、まず化粧が違う…。髪型、衣装の着付けと変わってくる…。
また洋物の中には仕度が大変な“黒塗り”なんていうのもあります。
もし「日本物&洋物」、「洋物&洋物(黒塗り)」、「日本物&洋物(黒塗り)」など、仕度が違う作品の二本立ての場合の“大休憩”と“小休憩は…?
その二回公演の日なら…? “大休憩”が1時間しかない宝塚大劇場なら…?
ここでちょっとシュミレーション!
「日本物&洋物(黒塗り)」の場合
開演前 | 日本物の化粧をし、カツラ、衣装を着て、早替わりの用意。 | |
一回目の 小休憩 |
35分 | 日本物のカツラ、衣装を脱ぎ、化粧を取る。 黒塗りの化粧をし、髪型、衣装を着て、早替わりの用意。 |
大休憩 | 60分 | 衣装を脱ぎ、黒塗りの化粧を取る。 日本物の化粧をし、カツラ、衣装を着て、早替わりの用意。 |
二回目の 小休憩 |
35分 | 日本物のカツラ、衣装を脱ぎ、化粧を取る。 黒塗りの化粧をし、髪型、衣装を着て、早替わりの用意。 |
と……文字にすれば簡単そうに見えますが、それがそれが!
・化粧をするのは顔だけじゃない! 体も塗る。
・化粧を取るのは顔だけじゃない!(黒塗りだと、お風呂や洗面所で洗った方が早い)
・衣装を脱いだら、それを元に戻す!(日本物なら着物etcを畳む)
・日本物の羽二重でぺしゃんこになった髪型をセットするのも大変!
・衣装部さんで衣装を着せてもらうのにも順番がある!(一斉に衣装部に行っても衣装部さんが着せられないので、時間差で着に行かなければならない)
・生徒さんも人間ですから…お手洗いにも行きます…
・開演5分前にはすべてを終えスタンバイ!
ここのどこに「お腹が空いたから、ご飯~」なんていう時間がある?
だから、口紅をしていても食べやすいものを口に入れたり、お芝居の最中にもし時間があればササッと食べたり…
いずれにしろ、ゆっくりご飯を食べる時間はありませんね。
もしももしも! あってはならないことですが、その日休演者が出たとしましょう。代役を立てることとなり、それはもうとんでもない慌しさ…
(【いざ代役! 代役って大変だぁ~!】)
じゃ「一本立てや、洋物&洋物であれば、ゆっくり休憩できる?」。
一本立てなら、小休憩に化粧を替える必要はありません。
二回公演の日でも、大休憩に化粧替えをすればいいので、それほど慌しくもありません。
二本立てでも、それが洋物&洋物なら、一本立てと同じです。
それでもやはり、化粧や髪型を直したり、早替わりの用意などは同じこと。
新人公演前なら、大休憩に自主稽古をしたりもします。
結局、休憩とは名ばかり。一旦楽屋に入れば、そこを出るまでずっとお仕事タイム。
お芝居とショーの二本立ての場合
余談――
お芝居とショーの二本立ての場合、その多くは、一本目はお芝居、二本目はショーという順番ですよね。
そしてショーの最後にはフィナーレが付きます。
ところが、お芝居が洋物で、ショーが日本物の場合、一本目は“日本物のショー”、二本目は“洋物のお芝居”という順番になり、お芝居の最後にフィナーレが付きます。
これは、ラインダンスや大階段を降りるフィナーレは、日本物より洋物のほうがふさわしいという理由が一番でしょうが、35分の小休憩で洋物から日本物に替えるのは、生徒もスタッフもあまりにも大変だというのもあるでしょう。
休憩時間は楽屋で大忙し!
そんなわけで、生徒さんたちは楽屋で大忙し!
次にするべきことを迅速に行えるよう、自分のやりやすいテクを個々で見つけ、段取りよく考えながら行動。
これを一つ間違えれば「ぎゃ~間に合わない~」ってことになっちゃいますから。
例えば……
化粧を取る時、まず最初にするのは……つけマツゲを取る!
取ったつけマツゲをその辺にポンと置いては、次に使う時に探さなければならない…
だから、つけマツゲのケースを、フタを開けた状態で、化粧前の真ん中に置いておく…
口紅をサッと拭き取りやすいように、ティッシュを折りたたんで置いておいたり、ヘアーピンを大きさに分け置いておいたり、コットンに拭き取り化粧水などを染み込ませておいたり。
黒塗りの体を洗うスポンジをあらかじめ濡らしておき、ボディーシャンプーを染み込ませておく……なんてことまでしました。
とにかく1分どころか1秒でも惜しい!という場合、時間のある時に先々の用意。
もちろん時間のある時は、食べたり話したり…と和やかな休憩時間ですけどね。
観客の皆さんにとっての開演前、幕間、そして終演後というワクワク感や余韻に浸っていらっしゃる間、「生徒さんたちは……今も楽屋で頑張っているのね…」。そんなことを思い出してあげてクダサイ。
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