世界遺産/ヨーロッパの世界遺産

ライン渓谷中流上部/ドイツ(2ページ目)

優雅に流れるライン川両岸には数々の古城と美しいブドウ畑。白ワインを飲みながら川を下れば聞こえてくるのはローレライの歌。今回はロマンティック・ラインで知られる世界遺産「ライン渓谷中流上部」をご紹介!

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

「ラインの真珠」リューデスハイム

「ラインの真珠」の異名を持つリューデスハイムのブドウ畑とライン川。剪定後のブドウは写真のように丸裸。左にはわずかにブレムザー城が見える

「ラインの真珠」の異名を持つリューデスハイムのブドウ畑とライン川。剪定後のブドウは写真のように丸裸。左にはわずかにブレムザー城が見える

丘に立つ女神ゲルマニア像。1871年、プロイセンによるドイツ統一を記念したもの

丘に立つ女神ゲルマニア像。1871年、プロイセンによるドイツ統一を記念したもの

クルージングの前に、リューデスハイムのワイン畑とライン川の岸辺を歩いてみる。

急勾配に広がる春のブドウ畑はまだ葉がついておらず、剪定も終わって幹だけむき出たまるではげ山。でもそこかしこに春の草花が茂り、土の香りが高く舞い上がってとても心地がよい。これが10月の収穫祭の頃には一面緑に包まれるのだろう。

登るのもひと苦労のこのブドウ畑、なんでもこの角度がいいらしい。急斜面が低い太陽に垂直に面し、周囲の山々や川の照り返しも受けて最高のブドウに育つのだとか。

この辺りからライン川を一望すると、いくつものお城が見えてくる。たとえば足下リューデスハイムにはワイン博物館になっているブレムザー城、対岸のビンゲンの街にはクロップ城、ライン川の中洲にはネズミの塔(モイゼトゥルム)。この辺りは紀元前後、ローマ帝国の国境線でもあり、その時代から税関として城が造られ、街が発展してきた。

いい気分でライン川の岸辺を散歩していると、なぜだかあまりに美しい川の姿に頭を抱えてしまう。どうしてこんなに日本の川と印象が違うのだろう?

ライン川に石を投げ入れて気がついた。川面があまりに近い。コンクリートの堤防があまりなくて、川の周囲はほとんど自然の土、草、木。川と大地が接するその曲線美。川がただ濃緑のドレスをまとう姿はとんでもなくセクシーなのだと、それだけで心打たれてしまった。

 

いざ、ライン・クルージングへ

ライン川を上る貨物船と中央奥がネズミの塔。ポイントポイントで船内放送がはじまり、解説が流れる。日本人観光客が多いときは日本語での放送も

ライン川を上る貨物船と中央奥がネズミの塔。ポイントポイントで船内放送がはじまり、解説が流れる。日本人観光客が多いときは日本語での放送も

ビンゲンの街並み。中央やや右上にあるのがクロップ城

ビンゲンの街並み。中央やや右上にあるのがクロップ城

マインツ~コブレンツ間は数社の船によってつながれていて、クルージングを楽しむことができる。船や川の状況にもよるが、上流から下るマインツ→コブレンツは約5時間半、下流から上るコブレンツ→マインツは約8時間半の行程。私は数か所で途中下船しながらリューデスハイムからコブレンツまで下ることにした。

KDラインの船に乗っていざ出発! 右手のブレムザー城を越え、対岸のビンゲンに寄港、さらにネズミの塔の脇を通り抜ける。ネズミの塔は税関だったようだが、マインツの悪徳司教がここでネズミに食い殺されたという伝説からこの名がついたようだ。

 

エーレンフェルス城。下には貨物列車が走っている

エーレンフェルス城。下には貨物列車が走っている

続いて右手に見えてくるのがエーレンフェルス城で、ここも税関や貯蔵施設として使われていた。この辺りに城が連なっているのは、国境であったことと、ここを通過する船から税をとる目的があったからなのだ。

私の乗った観光船は船足が速いらしく、次々と貨物船を追い抜いていく。船の屋上(コンパス甲板)に登ると風はかなり強いが、次から次へと移り変わる景色がたまらない。 
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