ライン渓谷中流上部／ドイツ(3ページ目)

盗賊のお城と古都バッハラッハ

アスマンスハウゼンの船着場のほぼ対岸、左手に現れるのが約1,000年に建築されたラインシュタイン城で、そのすぐ近くに見えるのがライヒェンシュタイン城だ。このライヒェンシュタイン城、13世紀前後には盗賊の根城となっており、通る船を略奪するなど辺りを荒らしまわっていたらしい。

続いて出てくるゾーンエック城もかつての盗賊の根城で、そのために何度も破壊されたという。盗賊がこれほど闊歩したのは、もともとこの地を治めていた神聖ローマ帝国が領域を持つ国家ではなく、小さな都市国家の集合体だったことに加えて、皇帝がいない大空位時代を挟む13世紀で、地方をまとめる組織がなかったことが原因だ。盗賊を一掃したのは13世紀末のルドルフ1世だといわれている。

この辺りには城が多く、ハイムブルク城、フェルステンブルク城、ノリッヒ城、そして古都バッハラッハのシュタールエック城へと至る。
このバッハラッハはロマンティック・ライン随一の古都。1,000年前後からある街で、この一帯のワインや木材の集積基地となっている。特にワインに関してはリューデスハイムに並ぶほど有名で、なんといっても名前の由来が酒の神バッカス。

ちなみにこのシュタールエック城、現在ユースホステルとなっている。ライヒェンシュタイン城やシュタールエック城、次ページのシェーンブルク城、サンクトゴアールのシュロス＆ヴィラ・ラインフェルスのように、世界遺産の古城に泊まれるのもロマンティック・ラインならではのアトラクションなのだ。

ユーゴーが絶賛したシェーンブルク城と7つの処女岩

バッハラッハをすぎて川のまん中に見えてくるヘンテコな城がプファルツ城だ。14世紀に建てられた税関で、中の床は川に浮いた形になっており、水量に応じて高さを変えるのだとか。

カウプの街の上にグーテンフェルス城を仰ぎ見て、続いて現れるのが「塔の街」オーバーヴェーゼルとシェーンブルク城。この城、かのビクトル・ユーゴーが「最高に美しい城」と絶賛したとか。

そしてこの城に伝わるのがローレライの7姉妹物語だ。かつてこのシェーンブルク城には7人の美しい姉妹が住んでいた。多くの男性が彼女たちにいい寄ったが、ことごとく振られてしまう。騎士ヴァルターもそのひとりに恋するが、あとひと息というところで冷たくあしらわれ、ついにライン川に飛び込み自殺を図る。

ところが、ヴァルターが見たのはラインの川底に広がる世にも美しい妖精の国。妖精たちはヴァルターを哀れみ、愛を知らぬ7姉妹を岩に変えてしまう。以来、ローレライの岩からは姉妹たちの悲しい声が聞こえてくるのだという。

ライン川の水位が低いとローレライの上流に現れたのが「7つの処女岩」。かつては多くの船がこの岩のために遭難したという。