世界遺産/ヨーロッパの世界遺産

ライン渓谷中流上部/ドイツ(4ページ目)

優雅に流れるライン川両岸には数々の古城と美しいブドウ畑。白ワインを飲みながら川を下れば聞こえてくるのはローレライの歌。今回はロマンティック・ラインで知られる世界遺産「ライン渓谷中流上部」をご紹介!

長谷川 大

執筆者:長谷川 大

世界遺産ガイド

水の精ローレライの伝説

左の岩山が高さ132mのローレライ。狭まりながらの急カーブと多数の岩礁のために遭難が相次いだが、現在は岩礁を爆破し、川幅を広げたおかげで安全な航行ができるようになった

左の岩山が高さ132mのローレライ。狭まりながらの急カーブと多数の岩礁のために遭難が相次いだが、現在は岩礁を爆破し、川幅を広げたおかげで安全な航行ができるようになった

絶世の美女ローレライはそのあまりの美貌のために多くの男を虜にしてしまい、裁判に引き出されてしまう。恋人にも裏切られた彼女は、ついに岩の頂上からライン川に身を投げる。まもなく、岩には金の櫛を持ったローレライが現れるという噂が流れはじめる。ローレライはその美貌で船を操る男たちを惑わし、船を川底へと引きずり込むのだという。

この伝説、どうやら19世紀に詩人ブレンターノが様々な伝説を参考に物語にしたものらしい。これをハイネが詩に起こし、ジルヒャーが曲を書いて民謡とした。

ローレライの岩山を見上げていると、どこからともなくローレライの歌が流れてくる。歌は岩にこだまし、不思議な空気で旅人たちを魅了する。

サンクトゴアハウゼンの家並みとネコ城。ローレライの岩山に登りたい人はこの街で下船しよう

サンクトゴアハウゼンの家並みとネコ城。ローレライの岩山に登りたい人はこの街で下船しよう

さて、ローレライをすぎると、船はラインフェルス城のあるサンクトゴアール、ネコ城(カッツ城)のあるサンクトゴアハウゼンの街へ寄港する。両城ともカッツェンエレンボーゲンという伯爵が税関として14世紀に建てたもので、ネコ城は「カッツ(猫)」という名前に由来している。

このふたつの街を経ると船はガラガラだ。多くの観光客がどちらかで下船してバスに乗り換え、次の観光地へと移動する。

 

ボッパルトの大湾曲とマルクスブルク城

ボッパルトから見た大湾曲。右奥から下ってきたラインの流れは左奥へと180度方向を変える

ボッパルトから見た大湾曲。右奥から下ってきたラインの流れは左奥へと180度方向を変える

観光客もほとんど下りたことだし、船内のレストランでアイスワイン注文する。甘い。甘いけれども香りは高く酸味はカッチリ、キレは鋭く、すこしもベタつかない。最高! 甲板で景色を眺めるのもいいけれど、ドイツ料理をいただきながらの旅もまたいいものだ。船内から見えるのはネズミ城。先ほどのネコ城の城主カッツェンエレンボーゲン伯爵が虎視眈々とこの城を狙っていたことからこの名がついたとか。

続いて出てくる街がボッパルト。2,000年の歴史を誇る古い街で、古代ローマ時代の要塞跡やカルメリッター教会、木組みの街並み、名産のワインとワイン畑が見所になっている。でも、なんといってもオススメはライン川が180度方向を変える大湾曲。街外れのリフトで山に昇ると、山頂からはこの大湾曲を望むことができる。

古城博物館として砲台、武具、牢獄などを公開しているマルクスブルク城

古城博物館として砲台、武具、牢獄などを公開しているマルクスブルク城

また、少し下流に下ると右岸にブラウバッハという街があり、ここからマルクスブルク城を訪れることができる。12世紀に建てられたこの城はロマンティック・ラインで唯一破壊されたことのない城として有名で、中世の姿をそのまま残す城として公開されている。

さて、シュトルツェンフェルス城を過ぎるといよいよ終点、コブレンツだ。

 

モーゼル川との交差点、要衝コブレンツ

奥から流れてくるのがモーゼル川で、ふたつの河川の間にある中央の角がドイチェス・エック。エーレンブライトシュタイン城からの眺め

奥から流れてくるのがモーゼル川で、ふたつの河川の間にある中央の角がドイチェス・エック。エーレンブライトシュタイン城からの眺め

コブレンツも2,000年以上の歴史を誇る古都。古代ローマの時代からモーゼル川と合流するこの地は要衝として知られており、ここに城砦を置いて国境をおさえていた。ふたつの河川が合わさるのがドイチェス・エック(ドイツの角)で、ヴィルヘルム1世の騎馬像が立っている。

さて、ロマンティック・ラインもここで終わりだが、ライン川はさらに勢いを増してボン、ケルンへと下っていく。船を乗り換えればさらにライン下りが可能だ。

ここまでの乗船時間は6時間弱。普通に下ると半日で終わってしまう行程だが、それではあまりにもったいない。ロマンティック・ライン沿いには数多くの古都があり、古城ホテルや木組みのホテルに泊まりつつ、かわいらしい家並みをゆっくり優雅に楽しみたい。

旅のお供はもちろんワイン。リースリングの味わいは超甘口~超辛口まで多彩で、ゼクト(スパークリングワイン)やアイスヴァイン(アイスワイン)、トロッケンベーレンアウスレーゼ(貴腐ワイン)もあり、楽しみ方は無限。ワイン片手の気ままな各駅停車旅はいかがだろうか?
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