性犯罪者「再犯率」のトリック


メーガン法支持者、または性犯罪前歴者の個人情報把握・公開を推進しようとする論調の根拠は、「性犯罪者の再犯率は『異常に高い』」とする説である。

以前「メーガン法を巡る賛否両論(1)」で、
”性犯罪者の再犯率は……(中略)……およそ41%にも上るという。”
という記述をしたところ(現在は訂正済み)、多くの反響、訂正を頂いた。

現在、この「再犯率41%」という、人目を引く高い数字が問題となっており、インターネット上でも論議を醸している。

この数字は、「性犯罪者の再犯率」として多くのメディアで取り上げられ、報道されている数値であるが、実は再犯率を正確に表していないどころか、再犯率とは関係のない算定を経て得られる数字であるという。

平成15年度警察庁統計によると、わいせつ罪の一つである強制わいせつ罪で検挙された者のうち、再犯者(何らかの刑法犯として過去に処分を受けた者。道路交通法を除く)は41.1%だが、これは性犯罪を繰り返したということではない。平成15年度に強制わいせつ罪で検挙され、かつ以前に何らかの罪で罰せられたことがある者の割合である。つまり、「41%」という数字は、強制わいせつ罪の「再犯率」とは無関係の、刑法上の「再犯者率」を表した数字に過ぎないのだ。

では、この強制わいせつ検挙者の「再犯者率」自体は、何か問題を示唆する数字ではないのだろうか。他の種の犯罪と比べても、刑法犯総数(交通業務上過失罪を除く)で検挙された者のうち再犯者は35.6%と、先ほどの数字とは5%の差にとどまっている。殺人の再犯者率は41.7%、強盗は42.3%とほぼ変わらず、脅迫の54.2%、恐喝の55.5%と比べればかなり低い数字だと言えるという。

私たちの考える「再犯」に近い概念の割合を表す数字はないだろうか。過去に同一罪種で処分を受けていた者を累犯者と呼ぶが、性犯罪の「累犯者率」は約10%程度で、他の罪種と比較しても、強制わいせつ罪や強姦罪が飛び抜けて高い数字であるということはない。

客観的に見て、「性犯罪者の再犯率が『異常に高い』」という説には、これを裏付ける統計資料が見あたらないのである。


犯罪被害者の人権か、加害者の人権か


奈良市の小1女児誘拐・殺害事件の容疑者逮捕から約1週間後、警察庁は性犯罪者の服役後の住所把握と情報公開を視野に入れていることを発表した。だが、刑務所管轄官庁である法務省は、これに対し、まずは慎重な姿勢を示した。

2005年1月7日、南野知恵子法相は閣議後記者会見でこの問題に触れ、「本人のプライバシーの問題や出所後の円滑な社会復帰に支障がないのかどうか考えると、大変難しい」とコメントし、さらに「再出発の姿勢が崩される道は矯正の観点から望んでいない」、「格別の慎重さが要求される」と強調した。犯罪前歴者の監視よりも、性犯罪者のより効果的な矯正プログラムに重点を置くとの意向を匂わせる内容だった。(⇒『法相、性犯罪者の住所把握に慎重姿勢』 2005.1.7 日経新聞)その後、法務省は性犯罪者の出所後の居住地情報を警察庁に提供することを決定したが、法曹界でも議論が噴出している。

米国で最近法廷に提出された異議申し立てでは、性犯罪者のオンライン・データベースが、憲法で保障されている権利のうち、3つの権利――プライバシーの権利、適法手続きを受ける権利、刑に服した後は過去の過ちをとがめられない権利――を侵害していると主張している。

また、メーガン法に代表されるような、犯罪者個人情報の一元的な把握・公開が導入されている国が、米国・韓国・英国であるという点も興味深い。EUのような、加盟条件として人権侵害の法制定がないことを要求する地域では、類似法成立は困難である。

性犯罪前歴者の情報公開を行うメーガン法は、被害者であるメーガンちゃんの母親の運動によって実現した、犯罪被害者の観点から作られた法律である。翻って日本では、被害者の人権か加害者の人権か、という議論になると、加害者の人権の方が尊重される傾向にあると評されて久しい。メーガン法に匹敵するような大規模な個人情報把握・公開となれば、慎重論、反対論も根強い。


(この項続く)次回:「メーガン法を巡る賛否両論(3)」~性犯罪の「抑止・矯正」は可能か~



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被害者の人権と加害者の人権。よく語られるこの問題ですが、皆さんはどうお考えでしょうか。今回取り上げるのは、奈良小1誘拐・殺害事件を契機に話題となっている、「性犯罪前歴者の、住民への情報公開」です。

ただ、これは小泉首相も支持し、先日警視庁・法務省発表のあった「性犯罪前歴者の現住所把握」とは別もの。個人データを、関係官庁までに留めるか、それとも一般住民にインフォームするかの、大きな違いがあります。

「性犯罪前歴者の、住民への情報公開」について、
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